ヴォルレポ

徳島ヴォルティスの試合を戦術的に分析するブログ

2021.10.3(日) J1リーグ第31節 徳島ヴォルティスvsサガン鳥栖 ~いつか見た光景~ 

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スタメン

日常と非日常

・いろいろと騒動もあった鳥栖の金明輝監督は、リカルド・ロドリゲスの徳島に影響を受けた監督として知られている。

・この試合でもビルドアップでは大畑をサイドに高く開かせて、島川・エドゥアルド・白崎+フリーマンの仙頭で[3-1]や[2-2]を作ったり、キーパーを組み込んで数的優位を作る手法など、既視感があったな。

鳥栖はキックオフと同時に左サイド(徳島の右サイド)へ長いボールを蹴りこんでくる。選手の特性を考えても、小屋松・仙頭・岩崎の「シングシングシングトリオ」サイドから崩したい狙いはあっただろう。

・オレンジの悪魔か。

・というわけで、フリーマンっぽく振る舞いビルドアップに関与する仙頭、タッチライン際に開く大畑、大畑を追い越したりインサイドに入ったりとレーンを意識した動きを繰り返す小屋松といった様相が鳥栖の左サイドになる。

・右サイドから崩しても、ゴール前で待ってるのが岩崎では高さでどうにもならん!というのもあったかもしれんな。

鳥栖にとって予想外だったのは徳島の出方だろう。

・深い位置から相手を追いかけるというよりも、鳥栖が後ろで数的優位を作り出せば、一列目は白崎と仙頭へのパスコースを消しながら撤退、ブロックを作る守備を優先していた。

鳥栖の攻撃は可変ありきのために、相手に撤退する時間を与えてしまう面もあるな。

・徳島は鳥栖が使いたいライン間のスペースをコンパクトに保ち[4-4]のブロックで対応。西谷・浜下のサイドハーフは状況に応じて2トップと同じような高さまで出て、数的優位からの運ぶドリブルや縦パスを警戒する素振りも見せていたな。

 

何を優先して守るか

・ところでこの試合は、サッカーにおけるいくつかの重要な要素を露見させた試合だったように思う。

・その心は。

・まず徳島の[4-4-2]の守備だ。一般的にゾーンディフェンスの優先順位は「ボール」「味方」「相手」の位置の順番で決まると言われている。

・もはや散々語られつくした感もあるけどな。

・なぜ相手よりもボールや味方の位置が優先されるか。サッカーはボールも守るゴールも1つずつしかないわけで、それらの位置を基準に味方と連動して適切なポジションをとっていれば、相手は必ず網にひっかかるからという認識なのだが合ってるだろうか。

・教えてえらい人。

鳥栖のボール保持は、立ち位置によって相手の守備網に穴をあけたい狙いなので、相手を追いかけまわすと術中にハマる。

・とにかく暑い日だったので、相手を深い位置から追い回すのはキツイとの考えもあっただろうか。

・いずれにせよライン間のスペースを消してから、垣田・バケンガの2トップでカウンターという作戦が効きまくってたな。

・大畑が上がったスペースへ走りまくる垣田。

・前半の早い時間から11人全員を徳島陣地へ送り込んでくる鳥栖は、勇敢というか無謀というか。

オフサイドのルールが適用されない自陣内から、スルーパスで抜け出す垣田が朴一圭の頭上を抜く先制ゴール。マークを捕まえきれなかったエドゥアルドは前半だけで懲罰交代となった。

・垣田の会心のガッツポーズを見るのはいつ以来だろうか。

 

勝点3へのポイント

・徳島はいつもと異なる戦い方を選択したことで、勝利のために外せないポイントがあった。その一つは「2トップがバテない間にスコアを動かすこと」だったと思う。

・宮代が不在の現状では、ゴールへの期待値が最も高い2トップだもんな。一美も頑張ってるけど。

鳥栖は徳島に先制点を奪われたことで、「対策されてる」との認識を抱きながらもボール保持を続けざるを得なくなる。

・ライン間を閉じられた鳥栖はサイドに活路を見出すわけだが。

・2トップが中を閉じて、サイドに出たボールは全体がスライドする徳島。飯野には西谷・ジエゴ、大畑には岸本が上手に対応していた。

・大畑をあの時の内田裕斗と見立てると、小屋松を大外に立たせてインサイドレーンを突撃する大畑、みたいな攻撃があっても良かった気がするけども。

・それでは岩崎を使った意味!となるのかもしれん。

鳥栖のもう一つの弱点として、[5-3-2]でセットする割にはウイングバックの迎撃能力が高くない。もっというと、ウイングバックインサイドハーフも非保持時のボール奪取力が高くない。

・おまけにセンターバックも徳島の2トップに手を焼いてたので、鳥栖はボールの奪いどころに困ってる感が強かったな。

ジエゴ・岸本でビルドアップの幅を確保して、鳥栖の[3]の脇から前進する徳島。

鳥栖の[3]が横に広がれば、垣田・バケンガへの縦パスも通していたのも見逃せない。

・バケンガは「賢い選手」でもあり、ジエゴが上がる→西谷がインサイドに移動すると自分は降りてきて、鳥栖の[3]を困らせる役割も難なくこなしていたな。

 

工夫を見せる鳥栖だったが

・前半終了間際に、またもカウンターから垣田に追加点を許した鳥栖は、後半からエドゥアルド→中野で、中野を最終ラインの真ん中へ。

・上手くいかないと、ピッチに立つメンバーがどんどんピーキーになってくるのは懐かしい光景だな。

・大畑、中野で最終ラインの裏のスペースをケアしたかった狙いはあるだろう。現に、中野は垣田に走り負けてなかったし。

・そして岩崎が左サイドへ小屋松がトップへ。林大地を引き抜かれて山下も不在なので、前線のやりくりが大変なのだろう。

・そのもどかしい気持ち、痛いほどよくわかるな。

鳥栖のバックパスの処理ミスを掻っ攫ったバケンガが冷静に流し込んで3点目。徳島としては、早々と勝負を決めて2トップを休ませることができた。

鳥栖も[3-1]のビルドアップから外への展開で、なんとか徳島のサイドバックを引っ張り出そうとしていたが、徳島のセントラルハーフがよくスペースを埋めていた。

・次節の横浜FCには強力なフォワードがいるが、チームの重心をどこに設定するか。ポヤトスの選択はいかに。

 

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雑感

・「ボール保持が強みのチームに対して、ブロックを敷いた守備から2トップでカウンター」というと、どうしても2018年も大分戦を思い出してしまうわけだが。

・あまり昔話ばかりしてると、労害と言われますよおじいちゃん。

・詳しくはおじいちゃんの昔の記事を見てほしいんだけど、あの時は夏の移籍市場で主力4人を失って、彼我の力関係を比べるとあれしか勝ち筋が無かったというのもある。

鳥栖も勝ち点・順位では遥かに上のチームだけど。

・でも今のチームはポヤトスの「使いたいスペースは空けておく」という志向が根付いてるから、あの時ほどカウンターに抵抗感が無かったのかもしれない。

鳥栖がそうだったように、リカルドの場合は「空いたスペースに立たせた選手を使う」だったもんな。

・ところで、この試合を見ていてもう一つ思い出したことがある。

・また思い出話か。

 

 

・リカルド時代の徳島にしてもこの試合にしても、この意見には大いに納得させられるのだが。

・なぜなんだろうな。

・相手の出方に対する観察力や、引き付ける術、それによるスペースの認知力が鍛えられるからだろうか。

・教えてえらい人。