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徳島ヴォルティスを分析するブログ

2018明治安田生命J2リーグ第24節 徳島ヴォルティスvs大宮アルディージャ ~気候が変われば戦いも変わる~

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徳島サブ・GKカルバハル、DF内田裕、MF小西、杉本竜、狩野、FW藤原志、佐藤

大宮サブ・GK塩田、DF高山、奥井、MF横谷、嶋田、FWマルセロ、シモヴィッチ

 

徳島vs大宮の試合結果・データ(明治安田生命J2リーグ:2018年7月21日):Jリーグ.jp

 

前回対戦時の模様は、戦術ブログの大家・らいかーるとさんが素晴らしい分析をして下さっているので、こちらもどうぞ。

大宮アルディージャ対徳島ヴォルティス ~4-4-2と対峙して見せた徳島ヴォルティスのらしさ~ - サッカーの面白い戦術分析を心がけます

 

 前節、アウェイで愛媛との四国ダービーに敗れた徳島ヴォルティス。この試合からいよいよ、待望のピーター・ウタカが登場。ブエノ→ウタカ、小西→前川と、愛媛戦からは二名のスタメン変更で大宮に挑む。

 

 大宮アルディージャは、直近のリーグ戦8試合負けなし。この間、6勝2分と絶好調。前節では首位争いをしている大分をホームで1-0と降し、勢いに乗った状態で徳島に乗り込んできた。なお大前はここまで14得点と、山口のオナイウと並びJ2得点ランクでトップにつけている。

 

 

前回とは様相の異なる展開

 両者の前回対戦は第三節。まだシーズンが開幕して間もない時期であり、涼しい気候下での試合だった。このため徳島のハイプレスが大宮を大いに苦しめた。ポゼッション→トランジション→ハイプレスでボールを回収→再びポゼッションという流れで、 終始ゲームを能動的に支配。スコアこそ1-0たが、内容的には徳島の完勝だったといって差し支えないだろう。あれから四ヶ月あまり。特に徳島は、主力選手の移籍や怪我もあり当時とは少し趣の違うチームになっている。

 

 徳島はここ数節と同様、5-3-2でミドルゾーンにセットした状態から守備を開始する。4-4-2で対峙する大宮は、徳島の出方を確認すると10分頃からビルドアップの陣形を変化させていくようになる。 

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 大宮は2DHのうち、三門がCBSB間やCBCB間に顔を出す事によってビルドアップに参加。サイドは左右によってタスクが異なっており、右の茨田はインサイドレーンに移動し、ライン間で活動するアタッカーとしての役割を担うことが多い。代わってSB・酒井宣がオーバーラップによって、こちらのサイドでの幅取り役を担当する。

 逆に左は、スピードに優れたマテウスがサイドに張っているため、彼の活動スペースを制限しないようSBの河面は低い位置からスタート。攻撃参加する場合も、マテウスの位置取りに応じてインナーラップを織り交ぜる。三門が最終ラインに落ちると、河面がポジションを上げ、マテウスインサイドレーンに移動。すると大前は列を降りる動きでボールを引き出す動きを見せるなど、両サイドにおいて体系的なビルドアップが仕込まれていた。

 

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 このあと大宮のポジショナルな攻撃による崩しの局面では、ショートパスで徳島の選手を引きつけたのち、ダイアゴナルランでDFラインの裏へ走りこむ選手へパスを送る形が繰り返し見られた。5-3-2でセットする徳島に対して、2CF、3CHの脇を起点に、右は茨田、酒井、山越で三角形を形成。囮としてボールサイドに近づく富山と、その裏へ走り出す大前という関係性。

 逆サイドは、大前が列を降りる動きでボールを引き出しながら、藤原がつり出されるとその裏へマテウスが走りこむ。特にマテウスのスピードはトランジション時において脅威だったが、徳島も広瀬を中心に粘り強く対応。徳島が5-3-2と中央に人数を割く陣形を選択できるのも、攻守に高い能力を誇る右の広瀬、左サイドに移ってからは水を得た魚のように躍動を続ける大本と、両サイドプレーヤーの存在が大きいことを忘れてはならないだろう。

 

大宮の右と徳島の左

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 一方、徳島の攻撃としては左サイドが鍵になりそうであった。個人技で勝負できるマテウスが待ち構える左サイド(徳島にとっての右サイド)と異なり、茨田をサポートするべく酒井宣は早いタイミングで高い位置をとってくる。茨田にボールが入ると、追い越していくような動きも少なくない。このため、徳島がパスカットから攻撃に移ると、大本の眼前には滑走路が広がる。大本は茨田、酒井のいずれにもスピードで優位性を示していて、困った茨田は苦し紛れのタックルで大本を止める。

 

 また「ロングボールの競り合いを好まない」「運動量が少ない」など、ネガティブな前評判も聞こえていたピーター・ウタカゴールキックからの流れなどを見ていると、確かに純粋な空中戦の競り合いは得意ではないし、好きでもないのだろう。ただ落下点にいち早く入り、身体でDFを押し込みながら競り合うプレーは問題なくこなせていた。 幸い、今の徳島のサッカーにおいて、前線にアバウトなロングボールが飛んでくるケースは殆どない。梶川もフィードの上手いGKなので、この日ぐらいの精度のロングパスならば、一定以上の確率でマイボールにしてくれる目処が立った試合だといえるだろう。

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 そしてこの両チームのシステムの噛み合わせにおいて、大宮2トップの裏に位置する岩尾がオープンな状態でボールを持てることが多い。アンカーを誰がケアするのか?という点は、大宮の対応が終始曖昧で、DHが出て行くには距離がありすぎる(ただでさえ数的不利の中央のフィルターがさらに減ってしまう。それでも三門は頑張って何度かアプローチしていたけど)。2CFもプレスバックにあまり熱心でないため、ビルドアップの出口になったり、ウタカの落としからライン間へ移動していくIHへパスを送るなど、徳島の攻撃の起点となっていた。特に前述した大本が優位性を示していた左サイドは、前川や島屋も絡むことによって幾度も好機を演出していった。

 

リカルドの慧眼と大宮の不発

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 徳島、大宮共に決定機はあったものの、GKとポスト選手の活躍によりスコアレスで迎えた後半。先に動いたのは大宮で、マテウスと茨田のサイドを入れ替えてきた。やはり攻撃のメカニズムも含めて、右サイドを狙われている、何らかの手当てが必要との認識だったと思われる。マテウスのスピードで、厄介な大本を押し込んでしまいたいと考えたのかもしれない。

 対して徳島は、まずシシーニョと前川の位置を入れ替えてスタート。次に目に見えて変化が現れたのは55分頃、大宮のペナルティによって梶川のキックからプレーが再開したときだ。ここで岩尾が左IHに上がり、シシーニョがアンカーの位置に入っていることがわかる。

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 この直後、ウタカの競り合いのセカンドボールを岩尾が拾い、スルーパスに抜け出した前川が左足で先制ゴールをあげるのだが、シシーニョのアンカー起用に目処が立ったことは大きい。前川と小西の併用を見ていても、5-3-2において必然的に消耗の激しくなる中盤の三枚を、選手のコンディションや相手の特徴、試合の状況に応じて、並びも含め使い分けていくつもりなのだろう。スペースを埋めるポジショニングと最終ラインの前でフィルターの役割が求められるアンカーと、アンカーと共に防波堤を形成しながらボールを奪うと前方へ飛び出していく、より運動量と推進力が求められるインサイドハーフ。岩尾・シシーニョ共に2つのポジションをこなせるため、万が一どちらかの選手にアクシデントが発生した(考えたくはないが)としてもチームのベースが大きく崩れることはないだろう。と思えるのは、サポーターとして非常に心強いことである。

 

  徳島は先制の3分後、CKからの流れで大宮に追いつかれたものの(クオリティや過程は全く異なるが日本-ベルギー戦の決勝点を想起させられるゴールだった)、66分、酒井宣からボールをカットすると、再び左ハーフスペースを起点にウタカのスルーパスに岩尾が抜け出し追加点。岩尾を左のIHに移したリカルドの采配がバッチリハマり、勝ち越しに成功する。

 

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 対照的に茨田とマテウスを入れ替えた大宮の変化は、上手く作用したとは言い難かった。インサイドレーンに移動してくる茨田だが、今度はそこに大前がいる。大前が列を降りる動きでボールを引き出しても、同サイドに深さを作れる選手がいない。このため、茨田、大前ともに良さを殺されてしまったように映った。また右に回ったマテウスも、カウンターから好機を創出したシーンがあったものの、ネガトラ時には前残りしていることが多く、大本の前に滑走路が広がる状況に大きく変わりはない。そして酒井宣に対してスピードで優位に立ち続ける大本。ここに島屋が流れてきたり、岩尾まで進出してくるようになると、酒井にとっては悪夢のような状況だっただろう。徳島に勝ち越を許す前の62分、大宮はマテウスと茨田のサイドを再び入れ替えていた。

 アディショナルタイムを含めると、およそ30分。1点リードの徳島は前川→小西の交代によってIHを手当て。対して大宮は、マテウス→マルセロ、富山→シモヴィッチと、システムは大きく変えずに前線の選手を入れ替えることによって打開を図ろうとしてきた。

 

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 マテウスが交代直前には、明らかに歩いている時間が長くなるなど、相当に疲労した様子を見ていても、この時期の戦い方は難しいということを改めて感じさせられた。「ボールは疲れない」というが、ポゼッションをしているチームも状況に応じてポジションを入れ替えなければならない。ボールを奪われると、ステイしてアプローチを優先するのか、元のポジションに戻り守備ブロックに参加するのか、素早い判断と運動量が求められる。

 対してリカルドがここ数試合、「守備はまずブロック形成を優先」「奪ったボールは前線の二人に当てて、素早く押し上げる」と分かりやすい戦い方を提示しているのは、体力の温存と共に、判断力の低下を防ぐという点からも効果的なのだろう。もちろんサイドプレーヤーの奮闘や、ウタカの加入、そしてこの日2ゴールを演出したキャプテン岩尾を中心とする3CHのクオリティの高さなど、要所で質的優位をもたらす選手の存在も忘れてはならないが。

 

雑感

 前回対戦時とは打って変わって「ボール保持の大宮」vs「ブロック守備で待ち受ける徳島」という構図が長くなったが、徳島がダブルを達成。大宮の志向するサッカーの良さが見えたと同時に、選手の入れ替えも含めてウィークポイントを上手く突いた徳島に軍配が上がった。

 

 初登場となったウタカは、年齢的なものかコンディションが上がりきっていないのか、最後は明らかにヘロヘロだった。ただ、その存在が相手を複数ひきつけてくれるので、いてくれるだけでいいのだ。ロングボールは思った以上にきっちり競ってくれていた。そして岩尾は神。