ヴォルレポ

徳島ヴォルティスを分析するブログ

2018明治安田生命J2リーグ第31節 カマタマーレ讃岐vs徳島ヴォルティス ~埋めがたい差~

f:id:awaraccoondog:20181001122803j:plain

讃岐サブ・GK瀬口、DF中島、荒堀、市村、MF佐々木、FW重松、原

徳島サブ・GK吉丸、DF大屋、MF内田裕、杉本竜、狩野、杉本太、FWウタカ

 

 今季も苦戦が続くカマタマーレ讃岐。北野監督が一向に改善されない練習環境に問題提起を行うなど、成績だけでなくチーム運営の苦しさも露呈している。この夏は竹内彬田中英雄の両ベテランを補強。スタメンの平均年齢が上がっているようにも見受けられるが、経験値を武器に残留戦線を生き残れるか。

 徳島ヴォルティスは地獄の連戦から解放され、距離的にも一番近いアウェイ戦。前節・大分戦ではサブからも外れ、休養を与えられていた石井がスタメン復帰。前線はバラルと前川の組み合わせで、ウタカは再びサブに回った。

 

 

J2というリーグの現状

 まず最初に言及しておきます。

 近年のJ2では、スペイン人監督の降臨やトレンドに則った戦術を仕込める日本人監督の増加によって、見ごたえのある駆け引きが増えたと個人的には感じています。戦術面の潮流といえば「5レーン理論」や「ポジショナルプレー」といった用語・現象になるでしょうか。ポジショニングによって局地的な数的優位を作り出したり、相手がマークしづらい位置に立つことによってフリーな選手を作り出し、そこで得られる優位性を生かして前線のアタッカーにボールを届けていく。失ったボールは組織的なプレッシングで、高い位置での奪回を目指す。リカルド・ロドリゲス就任以降の徳島が目指している路線は、概ねこれに該当するでしょう。

 このような相手の狙いを阻害するためには、幾つかの方法があるかと思います。今季の対戦相手で言えば、山口は徳島との対戦に合わせてフォーメイションを変えてきました。守備の基準点(誰が誰をマークするか)をはっきりさせることによって、被ポゼッション時の振る舞いを整理する。町田や水戸はあくまで自分たちのやり方に拘りながら、その練度で勝負にきました。それはコンパクトな「4-4-2」で徳島のポゼッションを窒息させ、高インテンシティと素早いトランジションでの速攻。選手の密集を生かしたサイドアタック。そしてここに挙げたいずれのチームも、徳島が苦戦を強いられた相手でした。

  対照的に同じ「4-4-2」でも序盤に対戦した大宮などは、被ポゼッション時の振る舞いがあまりに整理されていない印象で、徳島のポゼッションに対して低い位置でしかボールを奪えない。奪ってもすぐハイプレスを受ける。再び徳島の攻撃に移行する。といった悪循環から、なかなか脱出できませんでした。特に「3-1-4-2」で戦う徳島は「4-4-2」の相手に対してアンカー(この日なら岩尾)、両WB(表原と広瀬)といったポジションの選手が、システムの噛み合わせ上浮きやすく、このあたりの守備の整理が必要不可欠かと思います。

 要約すると、選手の質(札束)だけで何とかなる時代は終わりを告げ、明確なゲームモデルの有無や有効な対策をどれだけ用意できるか、などが勝敗を分けるリーグになりつつある。これがJ2の現状なのかなと個人的には感じています。

 

讃岐の4-4-2はどうだったか

f:id:awaraccoondog:20181002094817j:plain

 ではこの試合の振り返りに入っていきたい。讃岐は基本的にミドルゾーンで待ち受ける4-4-2を採用。徳島のバックパスはFWが追いかけ高い位置からプレッシングに出て行くものの、セットオフェンスに対してはハイプレスを仕掛けてこない。その一方で、徳島の井筒・藤原の両ストッパーにボールが入ったり、岩尾にボールが渡ると、数的不利を埋めるべく両SHやDHが積極的にアタックしてくる。ただし、ファーストディフェンスが曖昧なためボールの出所を制限しきれず、人数はかけているが対応が後手に回るといったシーンが目立った。

 

f:id:awaraccoondog:20181002100201j:plain

 このあと、徳島が井筒→表原と展開したときのパターンを例にとると、讃岐のSH・SBに対して中間ポジションをとる表原、SB裏のスペースをアタックするシシーニョ、ボールサイドに近づいてくる前川(バラル)といった役割に整理できる。この日は1.5列目的な役割で起用された前川は、ビルドアップの段階でも讃岐の田中や永田が岩尾に食いついた瞬間を逃さずに、背後で井筒から縦パスを受けるなどバイタルエリアの攻略に多大な影響力を発揮。表原は、武田がシシーニョのフリーランに釣られて自分への対応が甘くなるとカットインからハーフスペースへ侵入。武田が表原にアタックしてくるとSB裏へ走るシシーニョへパスを送る。

 

f:id:awaraccoondog:20181002101325j:plain

 徳島は表原のところで攻撃が詰まっても、シシーニョが近くにいることによってマーカーを引き連れてくれるだけでなく、一発でサイドチェンジが可能になる。また讃岐の守備の特徴として、サイドを押し込まれるとDF、MFの計八人が自陣深くまで帰陣しゴール前は人海戦術で対応する形になる一方で、2トップは前残りしていることが多い。このため徳島は岩尾を経由して左から右、右から左へと何度も大きな展開を見せていた。

 

出口の見えないオフェンスとトランジション

f:id:awaraccoondog:20181002104645j:plain

 対して讃岐のポゼッション時の特徴は、アレックスが大外ではなくインサイドレーンに移動することによって小西をピンどめ。オープンな状態でボールを持つ竹内から高木や木島徹へボールを供給する。ただし、最終ラインで数的優位を確保している徳島は積極的な迎撃で縦パスをカット。またバラル、前川が岡村、田中(ときどき永田)をマークすることによって讃岐にサイドチェンジを許さず、攻撃をワンサイドに追い込んでいく。

 

f:id:awaraccoondog:20181002105601j:plain

 「同サイドに攻撃を追い込んでいく」という徳島の守備の狙いは、讃岐の右サイドからの攻撃時にも不変だった。だが、トランジションからの速攻でよりチャンスになっていたのはこちらのサイドでボールを奪ったときである。讃岐はアレックスがインサイドレーンを駆け上がっていくため、大外のカバーに戻るには時間がかかる。徳島にとっての左サイドでボールを奪うと、石井までボールを戻して広瀬へ展開。技術の高さは錆びついていないものの、加齢とともに運動量やアジリティといった点では衰えが隠せなくなっているアレックスに対して広瀬が1on1を仕掛ける。前半に決まった徳島の2ゴール(それは勝敗を決した2ゴールでもあった)は、いずれも右サイドへの展開から戻りの遅い讃岐の二列目の間隙を突いて、バイタルエリアを攻略して生まれたものだった。

 

f:id:awaraccoondog:20181002113317j:plain

梶川を使って前プレを回避する徳島と前後分断されてしまう讃岐のディフェンス


 また讃岐はアレックスだけでなく、全体的にスタメンの高年齢化が進んでいる印象で、トランジションの局面において殆どで後手を踏んでいた。前への意識が強い守備を行う一方で背後へのケアが甘く、前プレを剥がされたり、デュエルでボールを奪いきれないとDFラインがしばしば無防備な状態に晒されてしまう。ただスカッドを考えたときに、ロングボールを高確率で収めてくれるCFや独力でサイドを突破していくアタッカーといった駒も見当たらず、ロングカウンターが難しいというチーム事情も確かだろう。ゴールを奪うためには、出来るだけ高い位置でボールを奪いたいという考えも理解できる。

 このような事情を抱える相手に、先制点、追加点と早い時間に立て続けに2点を奪えた意味は大きく、これにより讃岐は一層前がかりにならざるを得ない。逆に徳島は、バックパスも交えながらボールを保持して讃岐の選手を引き出していく。スコア以上に危なげの無い展開で時間が経過していく。

 

 なかなか突破口を見出せない讃岐だったが、数少ない光明は佐々木匠が投入されて以降の時間帯だった。相変わらず守備の強度では物足りなさを感じさせるなど、課題は徳島在籍時と変わらない印象だったが、前線を自由に動きながらパスを引き出しキープ、反転してスルーパスと攻撃に流動性をもたらす。讃岐のこの日の戦いぶりを見るに、反転攻勢には彼の才能に賭けるぐらいしか手は無いのでは?とも思える。彼の起用法は、今後のチームの命運を左右することになるのではないか。

f:id:awaraccoondog:20181002115238j:plain

 

雑感

 讃岐には申し訳ないが、チームとしての完成度、個の能力のいずれも、両チームには埋めがたい差があったと思う。その中で前半19分までに2点をリードして勝負をほぼ決め、アディショナルタイムに2点を追加して試合をクローズするという、徳島にとっては理想に近い試合運び。一方で前半に交代を強いられた広瀬が「右ハムストリングの肉離れで全治8週間」とリリースされたことは、今後に一抹の不安を残した。ボール保持時には表原、杉本竜、内田裕のWBで運用できると思うが、押し込まれるような展開になった時に広瀬がいないのは、終盤戦に向けての懸念材料である。