ヴォルレポ

徳島ヴォルティスを分析するブログ

2018明治安田生命J2リーグ第30節 大分トリニータvs徳島ヴォルティス ~見えない敵との戦い~

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大分サブ・GKムン、DF岡野、星、MF國分、馬場、FW後藤、藤本

徳島サブ・GK吉丸、DFキム、MF杉本竜、杉本太、内田裕、前川、FW佐藤

 

 大分トリニータは、徳島との前回対戦のあと5試合勝ち無しと苦しんだ時期もあったが、直近4試合は3勝1分と好調。今季のJ2において、最も安定して勝点を伸ばしているチームの1つだ。前節・東京V戦(A)から馬場→三平とスタメン変更は一名のみ。徳島とは古巣対戦となる那須川が、今節でJ2通算150試合出場を達成した。

 

 徳島ヴォルティスは、台風接近の影響で順延となっていた岡山戦(A)で痛恨の敗北。中二日でのアウェイ連戦。大分へ長時間移動した後に戦うこの試合では、コンディションを優先したのかスタメンを五名変更。DFラインを支えてきた石井に替わって、内田航が移籍後初スタメン。育成型期限付き移籍で湘南から加入した表原も、徳島でのデビュー戦で早速のスタメン起用。ウタカ・バラルの2トップでスタートするのもこれが初めてとなる。

 

 

フレッシュな選手をどう生かすか 

 前回記事にした山形戦が「チーム浮沈の鍵を握る大一番」だったことは間違いない。だが順位の近い岡山、上位に位置する大分とのアウェイ連戦も、徳島にとっては重要な試合だった。残念ながら岡山に敗れたことにより、この試合のもつ重要性は更に高まっていた。もし連敗することになれば、山形戦で生まれた上昇ムードも霧散するだろう。山形戦から大分戦までの三試合が、チーム状況、日程の厳しさ、対戦相手の順位、これらの観点から後半戦最初の山場だと言えた。

  「DFラインから丁寧にビルドアップを行い、ショートパスを繋いで前進する」。大分のゲームモデルは明確だ。前回対戦時には「ブロック守備からのカウンター」という徳島の攻め筋がバッチリとハマった。だがこの試合では前回と異なる点が二つあった。一つは、主力の移籍によって徳島の前線の選手が様変わりしたこと。そして先述した、過密日程のなかで疲労との戦いである。

 

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 この試合では徳島ポゼッション時における左右のメカニズムが異なっていた。左は表原が高い位置をとるのに対して、右は最終ラインに留まり4バックを形成する広瀬と入れ替わるようにサイドへ進出していく小西。井筒から表原やバラルへパスが渡ると、小西は機を見て大分の前田・那須川・福森の間へ侵入していく。大外でサイドチェンジを受けるのはオーバーラップしてくる広瀬。この三名は、いずれも岡山戦ではスタメンではなかった選手たち。加えて全員若い。ウタカ・バラルの能力を生かしながらも、フレッシュでHPに余裕のある三選手に、応分の負担を背負ってもらおうという考えもあったのだろう。

 

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 疲労の蓄積している徳島からすると、ロングスプリントを繰り返させられるような展開は悪夢だ。広瀬を低い位置に残してビルドアップを行ったのは、2トップの大分に対してサイドの低い位置で基点を作りたかったことと、ネガティブトランジションへの備えという側面もあったと思う。3CBだけだとサイドのレーンをカバーしきれない。例えば大分の2トップに、ロングボール一本でサイド深くへ抜け出されると、その度に長い距離を往復しなければならない。それは避けたい。スピードのある広瀬を残しておけば、大外レーンの対応に加えてCBのカバー役としても機能する。徳島加入後リーグ戦初出場で少なからず緊張もあったであろう内田航も、隣に広瀬がいたのは心強かったのではないか。

 また5-3-2でセットしてから守備を行いたい徳島にとって、ブロックが整う前に速攻を食らうのは困る。このためボールを失ってもロングボールを蹴らせないことと、小西や表原がブロックに加わる時間を稼ぐ必要があった。人数をかけて攻めるサイドではバラル・ウタカを中心に圧力をかけて、横パスをやバックパスを蹴らせる。ボールと逆サイドでは、幅取り役の選手が中間ポジションへ移動することによって、プレッシングの先鋒としても機能する。こうして見ていくと、攻撃にかける人数は少ないものの、空いたスペースの使い方やボールを失った後の仕組みまで、よく設計されていることがわかってくる(リカルドが本当にこう考えていたかは知りません)

 

ポゼッションvs中央封鎖

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 対して大分は、やはりと言うべきかショートパスを繋ぎながら、徳島の守備ブロックを左右に振ってくる。執拗なまでに。徳島の守備が中央を厚く守っているのに加え、2トップがそれほど高い位置から追ってこないのを確認すると、福森と岩田が鈴木よりも高い位置に出て丸谷と菱形を形成。 オープンな状態でボールを持てる両ストッパーから前進を試みていく。ただし徳島も、2トップの脇から前進されても逆サイドのCFが絞って丸谷を見る。仮に2トップの間を通されても、シシーニョが素早くチェックして丸谷を潰す。「門を閉じる」守り方を実行する事で、大分のボールを外へ外へと誘導していくことには成功していた。

 

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 だが前・後半共、20~25分を過ぎた頃から出足が鈍くなる選手が目立つ徳島。対して大分は福森がDFラインの裏へ正確なパスを通して三平に合わせたり、右サイドは松本・小手川・岩田がポジションをローテーションさせながら崩しを図る。小手川がポジションを下げてボールを引き出すと、松本がインサイド、岩田は大外へ移動する。松本が外で表原を引き出すと、岩田がWBCB間をオーバーラップしていく。大分が巧みだったのは、ポジションチェンジを行いながらも、常に徳島のWBをピンどめする選手を欠かさなかったことだろう。WBの縦スライドを許さないよう、ハーフスペースで起点を作る。これによって徳島はDFラインの押し上げが難しくなり、徐々に押し込まれる時間が長くなっていった。

 

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 また大分は前半の終盤ごろから、先述の攻め筋に加えて大外レーンに二人配置するパターンも披露。徳島のインサイドハーフを一人引き出してオーバーラップを仕掛ける。さらに小手川、前田といったアタッカーがスペースへランニングすることによってシシーニョを誘拐。押し込まれた徳島のDFラインの前方に広がるスペースへ丸谷が走りこんできたり、大外へのクロスで逆サイドから那須川が飛び込んでくるなど、多彩なパターンを見せる。

  

 後半に入っても大分の優勢は変わらず、体力の低下と共に門を閉じる作業が難しくなる徳島の2トップと、フリーでパスを受けるシーンが目立つ丸谷。小手川・前田両容疑者によるシシーニョの度重なる誘拐に伴って、福森からもバイタルエリアへ楔のパスが入ってくるなど、サイドではなく中央、しかもゴールに近い位置へと大分の攻撃が侵入する回数が増えていく。

 大分に「あわや」というシュートが増えていくのに対し、なかなかシュートまでたどり着けない徳島は、69分にバラル→杉本太。守備時には5-3ブロックの前方で丸谷をケア。押し込まれるとプレスバックしてバイタルエリアを埋める。杉本太には重要なミッションが課されていた。 攻撃ではもちろん、ウタカのフォローとタメを作って味方が押し上げる時間を作ること。

 

迎えた歓喜

 徳島は残り10分というタイミングでウタカ→佐藤。能力は高いけれど前残りしていることも多いウタカと異なり、高さと献身性のある佐藤を加える。全体の陣形をコンパクトに保ち、奪ってからの縦に早い攻め。特に中央で起点を作って、両サイドの押し上げを生かしたかったのではないかと思う。

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 プレースタイルや年齢の問題もあり、前残りしがちなウタカと、プレスに行くとなかなか戻ってこられないバラル。この試合でも、二人にボールが入ってもサポートできる距離にいる選手が少ない、他の選手が追い越していく動きが少ない(時間・距離的に出来ない)シーンが何度もあった。一方で能力が高いため相手のCBに脅威を与え続け、二人でも攻撃を完結できてしまうのが彼らの魅力とも言えるだろう。

 徳島はガス欠気味だった二人を下げ杉本太・佐藤を投入したことによって、高い位置からのプレッシングが復活した。ボールを奪えなくてもバックパスや、低い位置での横パスで大分のビルドアップに時間をかけさせている間にブロックを形成できる。そして大分の前進に合わせてプレスバックしてくる二人。大分が使いたがっていたバイタルエリアを封鎖するとともに、攻撃の起点となる役割も果たす。選手間の距離が近いためサポートする選手も大勢いて、スペースへ飛び出す両WBや小西を使えば前向きの矢印でアタックできる。

 

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 徳島は小西が右サイドをドリブルで持ち上がり、オーバーラップしてきた広瀬がクロス。一度は大分DFに跳ね返されるも、セカンドボールを回収し、今度は左サイドに井筒が登場することで大分の3MFにスライドを強制させる。岩尾へパスが渡るとアプローチしてくる丸谷。徳島は露わになったバイタルエリアを、表原→杉本→表原→小西と細かくパスを繋いで、最後は逆サイドから侵入してきた小西が高木の頭上へシュートを叩き込む。

 右サイドの攻略の仕方、逆サイドへボールが渡るとライン間に侵入してくる小西。徳島にとっては、前半から繰り返し見られた形が実った瞬間だった。一方で同じ5-3-2ブロックで守備を行うチームを相手に、サイドでの数的優位の作り方や、アンカーを誘拐してバイタルエリアを攻略するなど、形や回数は違えど大分も徳島も同じ狙いの攻撃を行っていたように思う。そして徳島の選手のコンディションを考えると、恐らく大分の決定機が一本でも入っていれば、反撃する余力は残っていなかっただろう。全員で耐え忍んだ末に掴み取った、価値のある勝点3となった。

 

雑感

 苦しい状況で掴んだ白星。そして小西・表原と徳島県出身選手の躍動。サポーターにとっては堪らない試合となった。徳島は疲労、大分は時間の経過と共に募る焦りとの戦い。勝利したのは徳島だった。

 この試合の影のMVPには広瀬を挙げたい。4バック化でのビルドアップ、機を見たオーバーラップ、大外クロスへの対応。与えられたタスクを確実にこなした。表原の加入によってサイドプレーヤーの層は再び厚くなったが、サイズがあって守備力も兼ね備える広瀬は貴重な存在である。