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徳島ヴォルティスを分析するブログ

2018明治安田生命J2リーグ第17節 アビスパ福岡vs徳島ヴォルティス ~持てる者と持たざる者~

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福岡サブ・GK山ノ井、DF田村、平井、MF城後、山瀬、FW木戸、石津

徳島サブ・GKカルバハル、DFブエノ、大屋、MF杉本太、小西、FW佐藤、藤原志

 

福岡vs徳島の試合結果・データ(明治安田生命J2リーグ:2018年6月2日):Jリーグ.jp


 昨年はJ2リーグ戦四位、昇格POの決勝で名古屋に敗れ、あと一歩のところでJ1昇格を逃したアビスパ福岡。大黒柱のウェリントンは神戸へ去ったものの、ドゥドゥ、森本といった前線の補強に成功。さらに昨年レンタル先の大分で抜群の存在感を示していた鈴木惇が復帰するなど、中盤から前は随分とメンバーが入れ替わった印象。今季も好調で三位につけている。フォーメーションは4-4-2。指揮を執るのは4年目を迎えた井原正巳監督。

 

 徳島ヴォルティスは、押し込みながら引き分けに終わった前節・松本戦(H)からスタメンを二人変更。累積警告による出場停止の内田裕に代わり井筒が左SBに入る。その他の10人は松本戦の後半と同じメンバー。フォーメーションも前節で可能性を感じさせた4-3-3でスタートする。五月を無敗で乗り切った勢いに乗って、上位との差を詰めておきたい試合だ。

 

 

長くは続かなかった良い思い出

 先述したように、押し込む時間の長かった松本戦の後半と同じく4-3-3を採用してきた徳島。おそらく監督も選手も、良いイメージを継続して試合に入っていきたいと考えていただろう。だが対戦相手が変われば、相手チームのゲームモデルもフォーメーションも変わる。この試合は立ち上がりから、松本戦では露わにならなかった問題点が攻守共に発生していた。

 

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 試合開始時で約28度、快晴の強い日差しという気象条件もあり、福岡の2トップは無闇な前プレは行わない。徳島ボールになるとまず所定の位置(岩尾の周辺、主にセンターサークルの頂上付近)へと戻り、陣形をセットしてから守備を開始する。この間に、大本が高いポジションをとり3バック化する徳島。2トップのポジショニングにより岩尾へのコースが消されているため、数的優位を作りたい右サイドの大﨑がドリブルで前進を図るケースが目立った。福岡のプレッシングは、大﨑が一列目とほぼ同じ高さまで持ち上がってくると開始される。森本→大﨑、ドゥドゥ→岩尾と守備対象を定め逆サイドへの展開を消したうえで、二列目以降もボールサイドへスライド。特にSH・DH間の距離をコンパクトに保つことによって、ブロックの中へ通されるパスを遮断していた。

 

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 右サイドからの攻撃が、福岡に警戒されていたことは立ち上がり早々明白になった。 ではサイドを変えてみる。一列目のスライドが間に合わないと見ると、SHが猛然とアプローチに出てくる。ここまではよく見る形のように思えるが、SHの移動によって出来たスペースを迎撃に出てきたのは、なんとCBの篠原だった。本来はSBのタスクだが杉本竜にピン止めされている故の、イレギュラーな形だったのかもしれない。いずれにしろ徳島にとっては先制の絶好のチャンスだった。井筒→岩尾と繋ぎ、島屋へラストパス。だが、数的優位を見逃さずスペースへ出した岩尾と引いて足下で欲しがった島屋。この試合の徳島はコントロールや判断のミスなど、特に前半、属人的なエラーが非常に多かったことは付記しておく必要があるだろう。

 

相手の違いにより露呈した問題点

 福岡のビルドアップは、ネガトラ時の対策も考慮してか、4バックの形を大きく崩さず行われることが多かった。松本戦の後半は、ボールを保持している時間が非常に長かったため、組織的なプレッシングを要求された回数がそれほど多くなかったように記憶している。

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 この日の徳島は、4バックの福岡に対して4-5-1でセットした状態から、IHを一列前に押し出した4-4-2へ変換することで対応を試みていた。プレッシングに参加するIHは、山﨑の位置に応じて、前川が出て行くこともあったしシシーニョが出て行くこともあった。いずれにしろ、非常に厄介だったのは鈴木惇の位置取りで、移動したIHの背後へ顔を出しながらビルドアップの出口になる。

 

 この時、岩尾が付いていってしまうと、バイタルエリアが露わになってしまう。一方で鈴木惇に時間を与えると、質の高いパスが前線、主に岩尾の脇のスペースに供給される、と悩ましい二択を強いられる。どっちも駄目じゃねみたいな。まして福岡の2トップは、開始早々から徳島のCBに対して強さ・速さで優位性を示していた。このため徳島は徐々に人を捕まえる形を諦め、4-5-1でタックルラインを下げた守備の時間が長くなっていった。

 

 福岡の強みは、シンプルなパターンの攻撃でも、個の能力によって形にしてしまうところにある。ウェリントンという柱は抜けたが、ドゥドゥ・森本の2トップはJ2屈指のコンビであることに変わりはなく、むしろ「困ったらウェリントン頼み」だった昨年よりもコンビネーションやバリエーションという点では良化しているように感じられる。

 

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 ビルドアップのキーマンが鈴木だとすれば、前線のキーマンは森本。彼がDFラインと駆け引きを行いながら、相手の圧力が最も強いエリアでも身体を張って起点を作る。DHへ落としてサイドへ展開というのが一つの王道パターン。またドゥドゥは、基準点の役割を果たす森本の周囲を衛星的に動きながらサイドのスペースへも積極的に飛び出していく。特にSHがSBをつり出して発生したスペース。あるいはビルドアップ時に3バック化した徳島の、ボールサイドの裏のスペースを狙っていた。

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我慢比べを打破した個の質

 気温を考慮したスタミナ配分もあるのだろうが、互いに前からのプレッシングを諦め、ミドルゾーン自陣側を主な守備エリアに設定した試合になっていく。徳島はライン間の距離をコンパクトに保ち、楔のパスに対しても複数で対応。一方の福岡は右サイドで数的優位を作りたい徳島に対して、時に5バックも辞さない構えで狙い通りの攻撃を許さない。

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徳島の守備

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福岡の守備


 手堅い互いの守備のなかにも、徳島としては可能性を感じさせる攻めがあった。それは先に例でも示した右→左へのサイドチェンジ。時間と共に体力の問題もあり、スライドが甘くなるだけでなく、福岡は特にSHDH間をタイトに閉めてくるので逆サイドに振られたときにDHDH間が空きやすい。

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 このとき中央でボールを受けた山﨑が再び右サイドへ振って、数的優位を活用出来れば面白いのだが、山﨑は左利き。右足の使用頻度は低い典型的なレフティであり、狭いスペースで向かって右側からくるパスに対しての選択肢が極めて限られてしまう。つまり相手を背負いながら、左足を使って少ないタッチ数でプレーするなら、後方の選手に落とすかインサイドキックで自分より右にいる選手にパスを出すしかない。だが残念、そちらは数的不利のサイド。というわけで、なかなか突破口を見出せない前半の徳島だった。

 

 後半、徳島は前川、福岡はドゥドゥと互いに決定機を1度ずつ逃し、迎えた58分。自陣からロングパスをドゥドゥの足下に合わせた鈴木のフィード。この時点で徳島のDFは四人揃っており、対峙する福岡の選手はドゥドゥのみ。だがドゥドゥはボールをキープしながら大本をなぎ倒すと、そのままカットインしながら30mはあろうかというロングシュートを叩き込む。

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フィードを受けた時点では完全に徳島の数的優位だが

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CBの詰めが甘いと見るや迷わずシュート


 このところ、徳島の戦い方の特徴の一つに、タックルラインを下げ、主にミドルゾーン自陣側で待ち受ける時間が長い点がある。前線からのプレスが思うようにハマらない、複数得点を奪えないチーム状況のため1点を守りきる苦肉の策など、複合的な理由が考えられる。この先ますます暑くなれば、プレッシングに出る時間がさらに限定される可能性もある。だが圧力がかからないと、前線にはある程度質の高いボールが入ってくる。するとDFの迎撃能力が試されることになるが、ブエノのいない現在のスタメンではその点に大いに不安が残る。特に福岡のように、質の高いアタッカーを複数擁するチームに対しては、最終ラインを四枚でセットしても耐えられるのか、五枚割く必要があるのか、彼我の能力差を冷静に見定めることが重要になるのではないだろうか。

 

太郎の復帰とダイヤモンド

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 福岡の先制点直後、徳島は約一ヶ月半ぶりの公式戦復帰となる杉本太を投入。リカ将が「相手守備を崩すには適しているが、メンバーが揃わないと難しい」と語る懐かしの4-4-2ダイヤモンドが復活する。

 

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 このシステムにおける、ポジショニングと役割をざっくり図示すると、上図のような形になるかと思う。 岩尾が時折2CBの間に落ちることによって数的優位を確保しながら2トップの脇で起点を作る。このポジションと、斜め前方でタッチライン際に開き幅をとる役割の選手は、IHとSBの選手でポジションとタスクの変換を行いながら分担しているように見えた。いずれにしろ、2トップが菱形の頂点に入るパターンが多いこと以外は、他の選手の位置取りに応じて細かなポジショニングとタスクの変化に対応する必要がある。その素養を備えた選手層と、昨年から継続して取り組んできた形を強みとして生かせるシステムであるのは確かだろう(それに違和感無く溶け込めているシシーニョはすごい)。試合途中でこれをやられると、相手は対応するのがちょっと大変そうだった。

 

 徳島にとって、最大にして最後のチャンスは97分。敵陣中央でパスを受けた岩尾が、ハーフスペースへ走りこんだ山﨑へ浮き球のパス。山﨑はDFラインの裏へ抜け出しゴールラインギリギリの位置から中央へ折り返すも、杉本のシュートはクロスバーを直撃し万事休す。なお54分の前川のシュートとともに、後半の決定機はいずれも、ハーフスペースを縦に抉ってプルバックという形から生まれたことは、得点力不足に悩むチームにとって一筋の光明になるかもしれない。

 

雑感

 元々層が薄かったうえに、チーム得点王の渡が抜けたCFは、最重要補強ポイントのはずだった。ところが今年チームに加わった選手たちは、2名が長期離脱、1名は現在のところ期待はずれといった状況で、補強どころか補充にもなっていないのが現実だ。試合後にリカルドが思わず、相手チームの外国籍選手を羨むようなコメントをしたのも致し方ないように思う。他のポジションは充実した補強が出来ているだけに、なおさら勿体無く感じる。

 

 一方、前節で岩尾、この試合では杉本太が久々の復帰を果たした。ミッドウィークに行われた天皇杯でも広瀬がサブ入りするなど、怪我人が戦列に復帰し始めている。これから気候的に厳しい季節を迎えるが、相手のゲームモデルに応じて選手やシステムをどのように使い分けていくか、監督の選択にも注目したい。とにかく今は、粘り強く勝点を拾いながら上位に食らいついていく必要がある。徳島の選手層の厚さが生きてくるのは、これからだ。