ヴォルレポ

徳島ヴォルティスの試合を戦術的に分析するブログ

2019明治安田生命J2リーグ第20節 ヴァンフォーレ甲府vs徳島ヴォルティス ~小さな違いはやがて大きな差へ~

f:id:awaraccoondog:20190707110031j:plain

甲府サブ・GK岡西、DF小柳(→64分 松橋)、MF新井、後藤、荒木(→89分 森)、FW太田、宮崎(→81分 森)

徳島サブ・GK永井、DF秋山、MF清武、渡井、表原(→89分 野村)、鈴木徳(→81分 杉本)、FW押谷(→84分 河田)

 

ヴァンフォーレ甲府はここまで、リーグ戦4位と好調。とりわけ目をひくのは19試合で31得点という得点力。しかしこの試合では、既に負傷離脱しているドゥドゥに加えて、ウタカも体調不良でベンチ外。バホスや曽根田まで欠いてもまだ佐藤洸一がいます!という前線の層の厚さは、なかなかの畜生レベルである。

 

徳島ヴォルティスは、今年もまたスタートダッシュに失敗してしまったものの、ここにきて3連勝中。J1からの引き抜きや助っ人の退団で、昨年とは大きく主力が入れ替わったが、ようやくメンバーの固定や戦い方の浸透が進み、内容に結果が伴ってきた感がある。出遅れを取り戻すためには、PO圏内に位置する甲府は絶対に叩いておきたい相手。

 

 

攻守に鍵を握るSBの配置

徳島のキックオフで始まったこの試合。ショートパス主体でビルドアップを行う徳島に対して、甲府は1トップ+2シャドウの3人がプレッシングのスイッチ役となる。さらに佐藤洸の背後に位置する岩尾・小西に対しては、佐藤和、小椋で監視。徳島は、両SBのポジショニングで甲府の圧力に対抗。甲府が5-2-3気味でプレッシングにくるときはシャドウの裏、つまりシャドウが見るには後ろに引っ張られる、WBが見るには縦に遠すぎるというポジショニング。5-4-1で後ろに重くなれば、低い位置から1トップの佐藤周辺のスペースを上手く使ってボールを前進させていく。さらに前線では河田が、裏抜けとロングボールのターゲット役を上手く織り交ぜながら奮闘。ここ数試合と同様に、攻撃に深さをもたらしていく。

f:id:awaraccoondog:20190707113443j:plain

 

ヴァンフォーレ甲府の攻撃は、前線の三選手にいかに手早くボールを届けるか、に主眼が置かれているように見えた。保有するFWの顔ぶれを考えると当然の選択であろう。上述の通り主力を揃って欠いているものの、ウタカの体調不良は直前のことだったらしく、甲府・徳島ともに「ウタカありき」で準備を進めてきたのは間違いないと思われる。

徳島の守備は、右SHの岸本に大外レーンを守らせ、5バック気味にセット。河田のみを前線に残し、二列目の「4」は選手間の距離をコンパクトに保ちながら、ライン間へのパスを遮断する。岸本に左WBの内田を監視させることで、4バックはペナルティエリアの幅を守り、甲府の1トップ2シャドウを積極的に迎撃していく。

f:id:awaraccoondog:20190707115850j:plain

 

SBからインサイドレーンの攻略

なかなか佐藤洸へボールが収まらない甲府は、攻め筋を変更。横谷がサイドに流れることで、松橋と2on2からのコンビネーションプレーで突破を狙ったり、森はボールを持つとドリブルからのカットインを積極的に狙ってくる。この両シャドウは、攻撃にアクセントをつけるべく、ボール保持時には比較的自由な動きを見せる。具体的には、逆サイドの選手がボールサイドまで寄ってくることがあるのだが、恐らくこの傾向を徳島はスカウティングの段階で把握していたはず。先制点は、同サイドに密集してきた甲府の攻撃をストップしたところから反撃開始。内田裕から野村経由で田向(逆サイドに絞ってきていた森の背後)へボールを送ると、ハーフスペースをドリブルで駆け上がる。右で開く岸本へボールを預け、自身のオーバーラップで数的優位を作り出してフリーキックをゲット。小西が蹴ったライナー性のボールを河田がニアで触り、こぼれ球を岩尾が蹴りこんだ。

「SBから、逆サイドのインサイドレーンで待つ選手へのパス」は、5-2-3でプレッシングにくる甲府に対して非常に効果的で、WBをピンどめ(つまりDFラインを容易には上げられない)状態を作り出してから、ハーフスペースでボールを前進させることに成功していく徳島だった。

f:id:awaraccoondog:20190707121633j:plain

 

犯人は佐藤和弘説 

立ち上がりの徳島は攻守に連動性を見せ、良い出来だったように思う。上述のボール保持やセットディフェンス、ポジティブトランジションだけでなく、ネガティブトランジションにおいても、岩尾や田向の絞る動きによって佐藤洸を決してフリーにさせず(おそらく相当ウタカ対策を練ってきたと思われる)甲府の攻撃の芽を摘んでいた。

 

やや流れが怪しくなり始めたのは20分あたりからである。甲府はそれまで、ビルドアップ時にDFラインの間に降りてきていた小椋や佐藤和がその動きをやめ、河田の周辺に位置するようになる。特に厄介だったのは佐藤和のポジショニングで、ある時は岩尾と野村のあいだ、ある時は岩尾の背後から顔を出してパスを引き出していく。徳島の前線は河田のみということもあり、さほど規制をかけられない状態で甲府のDFにボールを持たれている。そこに背後から佐藤和も現れると、どうしても岩尾の注意がそちらに移ろう。こうして徐々に徳島の二列目を分断にかかる甲府。さらに山本が、サイド・DFラインの裏と巧みにロングボールを蹴り分けることによって、コンパクトに保たれていた徳島のDF-MF間が間延びさせられていく。

f:id:awaraccoondog:20190707123438j:plain

佐藤和の動きや小椋のポジショニングで縦のパスコースを作り出していく甲府

 

それなりに危ないシーンはあったものの、警戒していたであろう内田の左足クロスは岸本で蓋をし、横谷・松橋の右サイドは杉本・内田裕で対応。ペナ幅を守る4バックを中心に、最後は身体を投げ出して甲府の攻撃を凌いでいく。早い時間帯に失点したこともあり、時間の経過と共に前がかりになっていく甲府。両WBもポジションを上げているため、徳島はポジティブトランジションから杉本・野村・岸本といった選手の攻撃参加で、数的同数(時に数的優位)でカウンターを仕掛けるも、こちらも最後の精度や判断を欠き追加点を奪うことが出来ない。

 

ようやく徳島の守り方が整理されてきたのは試合終盤か。杉本⇔野村のサイドを入れ替え、交代で入った鈴木徳を中心に、より人を見る守り方へ変化。甲府のサイドアタックに対しても、マークを受け渡すのではなく、ある程度人を決めて付いていくことによって試合をクローズ。上位相手にアウェイで勝点3を持ち帰ることに成功した。

 

雑感

特に後半は危ないシーンが多く、決められてもおかしくない被シュートが幾つかあった。だが甲府の決定機は佐藤和が絡んでいることが多く、もっとも警戒すべき前線の三人に殆ど良い形を作らせなかったという点で、一定の評価はできる試合であったように思う。

 

今の徳島は田向・内田裕の両SBの戦術理解度が高く、ポジショニングやボールの前進において大きな役割を果たしている。甲府は後ろで数的優位を作っても、相手を引きつけてからリリースするというシーンが、それほど多く見られなかった。対して徳島は、バイスロングフィードにしろ、インサイドレーンを駆け上がるSBにしろ、必ず相手を引きつけてからボールを放す。こうした小さな積み重ねが、最後は大きな差となって表れることを願いたい。