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徳島ヴォルティスを分析するブログ

2018明治安田生命J2リーグ第20節 モンテディオ山形vs徳島ヴォルティス ~特効薬と副作用~

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山形サブ・GK児玉、DF松本、茂木、MF汰木、ロドリゲス、FW北川、中山

徳島サブ・GK松澤、DF井筒、ブエノ、広瀬、藤原広、MF小西、FW杉本竜

山形vs徳島の試合結果・データ(明治安田生命J2リーグ:2018年6月23日):Jリーグ.jp

 

 木山体制二年目を迎えたモンテディオ山形。昨年と比較すると「木山チルドレン色(別名・愛媛FC色)」がかなり薄くなった印象。オフには佐藤優平・高木利弥の移籍などもあったが、櫛引・熊本・三鬼・小林らの加入で世代交代を進めつつある模様。直近は千葉、甲府と難敵をいずれも2-1で降し、10位まで浮上してきている。

 

 福岡・町田・山口と上位陣との連戦で、痛恨の三連敗を喫した徳島ヴォルティス。低迷するチームに追い打ちをかけるかのように、大﨑玲央のヴィッセル神戸への完全移籍が発表され、これが徳島の選手としてのラストゲームとなる。約1年半、DFリーダーとしてチームを支えてくれた大﨑を、勝利で送り出したい一戦であった。

 

 

連勝中の勢いと明確な狙い  

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 山形は連勝中の勢いそのままに、キックオフと同時に攻勢をかけてくる。徳島の左サイドへロングボールを蹴り込み、落下地点にCF、シャドウ、WBが集結。DH、CBも押し上げながら後方支援に回り、サイドチェンジの道を確保する。数的優位を生かして失ったボールに対してもゲーゲンプレッシングを仕掛け、狩野→シシーニョへの横パスをカット。小林がそのままドリブルで仕掛け、PA内に侵入してシュートを放つ。キックオフ時の陣形からも「前からいくぞ」というメッセージ性を感じさせるには十分だった。

 

 また、4-3-1-2あるいは狩野を一列上げて4-3-3でセット守備を行う徳島にとっては、中盤の3の脇が空きやすいスペースになる。サイドへ蹴り込まれるボールに対してはSBが対応、DFがスライドしCB間のスペースは岩尾が埋める、といった約束事は徹底されている。だが山形はそれを逆手にとり、サイドの数的優位からSB+CB一枚をつり出す。DFがスライドしてきたところ、クロスをファーサイドへ上げて、逆サイドのSBに対してアタッカーがデュエルを仕掛けるパターンを繰り返し狙っていた。多少形は違うが、先制ゴールと決勝ゴールは、いずれも山形のファーへのクロスから生まれている。

 

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 小林のゴラッソで8分に先制した山形。徳島はWBの上下動とIHがレーンを斜めに移動する動きによって山形のWBに二択を迫り、浮いた選手をビルドアップの出口として活用していく。ハーフスペースの入り口は両シャドウ、中央レーンは2DHがプロテクトする山形に対し、CB⇔岩尾、CB⇔SBのパスを織り交ぜて山形のシャドウにレーンの移動を強いることによって、縦のパスコースを作り出していく。このため徐々に阪野が背後の岩尾への警戒を強め、山形のタックルラインが下がっていく試合展開だった。

 

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 だが山形のシャドウのポジショニングは、トランジションの局面では大きな威力を発揮する。後方からのロングパスを競り合う阪野の周囲を、個人技に優れる小林、運動量豊富な南がサポートすることにより攻撃の第一波が始まるが、徳島が数的優位を確保するには2CB+岩尾に加えて、SBの絞る動きが要求される。このため横パスを使ってサイドを変えられると、逆サイドのWBがオープンな状態になってしまう。低い位置での横パスはリスクの高いプレーでもあるが、GK櫛引のキック精度が低いこともあり、山形は多少強引にでもオープンなWBを活用していくようになる。逆に徳島は試合序盤のプレッシングで、キックの怪しい櫛引まで戻させれば何かが起きそうだという空気が漂っていただけに、多少勢いをそがれる形になってしまった。

 

 25分には、WBを使った形から山形に追加点が生まれる。左サイドでボールを受けた山田が、逆サイドを駆け上がっていく南へ対角線のロングフィード。徳島は人数は揃っていたものの、石井、大本とPA内で軽い対応を見せた選手が次々と交わされ、最後は内田と岩尾のカバーも間に合わず失点。カウンターからの個人技で山形のリードが2点に変わる。

 

秘密兵器の登場

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 徳島は39分、前川→ブエノで、システムも3-4-1-2に変更。TMでも終盤のパワープレー対策として試されていたFWブエノが、遂にベールを脱ぐことになった。

 

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 試合を通して、相手DFを背負いながらの安定したポストプレー、その後動き直してゴール前に侵入しクロスに合わせる流れなど、CFとしての違和感の無さには驚かされた。ただ試合を見直してみると、リカルドがFWブエノを生かすための策をきっちり用意していたことにも気づかされる。

 

 まず3CB+2DHでボールを安定保持することによって、両WBが高い位置に進出する。シシーニョは変わらずサイドへ流れる動きによって、シャドウを連れ出したりWBを引き出して山形の陣形にズレを生み出していく。対して岩尾は列を下りる動きで、山形の一列目に対して数的優位を確保。徳島が密集を作る逆サイドに比べ、こちらは中央で基準点となるブエノと、タッチラインを踏むポジショニングから1on1で勝負する島屋で山形のWBCB間を分断。ビルドアップから解放された内田が、このスペースをアタックする。

 

 ブエノの投入で流れが変わり、前半終了間際の島屋のゴール、後半開始直後には山﨑のPKで追いついた徳島。だが急造FWの問題点も表出し始める。攻撃時、特にゴール前では威力を発揮するブエノだが、守備面では課題を露呈。システムのかみ合わせから、山﨑・ブエノの2CFvs山形の3CBと数的不利なうえに、プレッシングを交わされた後の動き直しやポジショニングの修正など、アクションの連続性に問題があった。思うように前からの圧力がかからないため、タッチライン際からプレッシングに加わってきた島屋が「もっと前から行けよ!」と他の選手にジェスチャーで促していたのが象徴的だった。「俺ならこういう風にアプローチするのに」と、後ろから見ていて歯がゆさもあったのだろう。

 

 今の徳島に最も欠けている、相手ゴール前での高さ・強さをチームにもたらしてくれたブエノ。一方で彼の起用は、組織的なプレッシングや攻撃の流動性の面においてマイナスに作用するリスクもある。攻撃においてはシステム変更やポジションチェンジを活用し、彼の能力に頼りすぎることなく上手く組み込むことが出来ていたと思う。プレッシングの部分は不慣れなポジション故に仕方ないだろう。

 

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  ブエノが前線にいる割には、ロングボールを多用してくるわけでもない徳島に対して、山形は63分の汰木の投入をきっかけにセット守備の陣形を5-3-2に変更。徳島の最終ラインのビルドアップは放置する。代わりにカウンターの起点を明確に二枚用意。3の両脇は南とフレッシュな汰木を配して、ハーフスペースのケアとカウンター時の推進力を確保する。ボール保持の時間が長かったのは徳島だが、上述のプレッシング問題もあり、山形のカウンターにもゴールの香りが漂い始める。

 72分にはシシーニョ、岩尾が共に移動し空洞化していた中盤を利用して、トランジションから4on4の局面を作り出す。徳島は広瀬が懸命に戻るも、汰木のファーへのクロスを、阪野が内田裕と競り合う形でゴールに沈める。撃ち合いとなった試合は山形が3-2で勝利した。

 


第20節 徳島ヴォルティス vs モンテディオ山形

 

雑感

 また負けるのか・・と覚悟した0-2から、ブエノ投入で流れが徐々に変化。予想外に早い時間に追いつけたものの、その後はゴールが決まりそうで決まらず。逆にトランジションの怪しさを狙い撃ちしてきた山形に逆襲をくらった。

 

  ブエノのFWが予想以上にさまになっていたことや、彼を組み込んだ攻撃パターンもしっかり用意されているなど、嬉しい驚きもあった。一方で「もっとシンプルに2CFを使われた方が相手は嫌だったのでは?」という局面も。アディショナルタイムにはPA内に山﨑、ブエノ、大﨑が待っているのに「そこでクロス上げないのかよ!」みたいな。

 

 トータルの収支で見れば、ブエノのFWは十分お釣りがくるレベルだったと思う。むしろ、ブエノが多少なりともまともなCFに見えてしまう現状が問題。レオには神戸で頑張ってほしい。徳島にとっては痛手だし、このタイミングでの移籍に様々な意見があることは理解できるが、あのタイプのCBがJ1でどの程度通用するのか。特に対人の局面において、個人的には大変興味がある。