ヴォルレポ

徳島ヴォルティスの試合を戦術的に分析するブログ

すべて「ポヤトスのせいだ」とは言わねど

 このタイミングで書く記事としては不適切なのかもしれない。こんな暇があれば、徳島の試合を何度でも見直してポヤトスの狙いを少しでも汲み取るべきなのだろう。でも今はその気になれない。

 それは徳島の試合がつまらなくなったとか勝てないからではなく、このクラブがより大きな岐路に立っているように思えて仕方ないからだ。だからこの記事は主目的として、自分を納得させるために書く。拡散もしない。それを理解していただける方のみ、最後までお付き合いください。

 

 徳島ヴォルティスは、先日の札幌戦に敗れてリーグ戦三連敗。約三週間の「仕込みの時間」が与えられたポヤトスだったが、FC東京マリノスと三試合続けて0-1の敗戦となった。彼の本格的なチーム合流以降「あれ?なんか思てたんと違う」と感じながらも「時間が全てを解決してくれる」と信じた人は多かっただろう。だからこそ、この三試合の結果と、それに輪をかけた内容の薄さが大きな失望を生んだ。

 もっともJ1昇格一年目。「順位も内容もこんなもんでしょ」「J1は甘くないよ」と指摘されると、言い返す言葉もない。「この戦力でそんなに勝てると思ってたの?」まったくの正論だろう。

 

 ただ試合を見れば見るほど、以下のような思いが深くなっていくのも確かなのだ。

 

「この選手たち、もっと上手かったはずでは?」

 

 それは試合の勝敗とは関係ない。後方で数的優位を作り、深さをとりながらグループで前進していく仕組み。センターバックの運ぶドリブルとライン間に用意された複数のパスコース。スイッチを入れる縦パスやサイドチェンジ。ピン留め要員とカットインからのシュート。最終的に「誰が時間とスペースを得てどう崩していくか」が論理的に構築されていた攻撃の数々。今は何も無くなってしまった。ただの一つも。

 

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 新たにピッチ上に出現したのは、ポジションを大きく動かさずに選手間の距離を広くとり、相手の守備網を広げようとするサッカーだ。だがこれには、少なくとも2つの能力が必要になると考える。「長めのレンジのパスを正確に蹴り、止める技術」と「一人で広範囲をカバーする守備能力」だ。選手間の距離が広がるということは、強いパスを正確に操り、たとえボールを失っても独力で何とか対応することが求められる。

 徳島のスカッドを眺めたとき、J1の猛者相手に、これらの点で互角以上に渡り合える選手が何人いるだろうか?もちろん「それも含めて個の力」なのかもしれない。でも徳島のような立ち位置のクラブが、わざわざ個の質の差が現出しやすいようなサッカーにトライする意味があるのだろうか?

 

 結果的に今のサッカーがどうなっているか。長いレンジのパスに四苦八苦して相手に詰められる。パスは正確性を欠き、トラップがずれ、時間の余裕を失う。センターバックやキーパーまで戻しても「相手を誘い出すパス」とは意味合いが全く異なるので、出しどころがない。爆弾回しは、相手の急所に達するはるか手前で爆発してしまう。あるいは、時に長いボールを蹴っても垣田の周りは援護が少なすぎて回収されてしまう。当然「グループでの前進」が出来ていないので、散発的なプレスしかかけることができず、送ったボールはすぐに自陣へ返ってきてしまう。

 彼我の戦力差を痛感する試合があるのも確かだ。だが今のサッカーは、その戦力差があまりに剥き出しの形で放り出されている気がしてならない。何より見ていて辛いのは、選手が下手になったように見えることだ。我々は戦術が選手を守り、自信をつけた選手が成長し、羽ばたいていく姿を幾度となく見てきた。翻って、今のサッカーで上手くなりそうなのは誰だろう?これもまた、育成型クラブとして致命的な問題であるように思える。

 

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 ここからは完全に私の仮説である。ポヤトスは育成年代の指導歴が長かった人物だ。よって、特定のゲームモデルに左右されない選手を育てたいという思いがあるのかもしれない。剥き出しの状態でも通用する個。それが11人揃ったクラブは、間違いなくめちゃくちゃ強い。そんなことが可能なのかどうかは知らんけど。ひょっとすると「個の質?それを揃えるのは私の仕事じゃないでしょう」ぐらいに思ってる可能性もある。

 強化部にも落ち度はある。ポヤトス・マルセルの入国を急がせなかったのもそうだし、今年に限っては、リカルドの後継者としてソフトランディングさせられる人材を用意しておくべきだった。

  

 最終的なゴールに直結するプレーは「個の質」に依存する部分が大きいとしても、その手前のお膳立てまでは、監督の仕事だと考える。特に攻撃は、監督の手腕の差が出やすい部分だと思う。前任者のサッカーを踏襲しろなどと要求しているわけではない。ただし、まるっと新しいことにチャレンジしている割には、収支の+が少なすぎる。であるならば、前任者の遺産を上手く活用して、落としどころを探るべきだ。

 ポヤトスに長期的に監督を任せ、希望に沿ったスカッドを1から揃えます、なら話は別だ。だがまず降格争いを生き残らなければならない。来季どのカテゴリーで戦うにせよ、補強は他クラブとの競争になる。「選手を売ることは悪ではない」ならば、今いる選手に成長してもらう必要があるし、新たな才能が「徳島でプレーしたい」と思う環境を整えねばならないだろう。

 

 このままだと「なんか当たり監督引いて一時は面白いことにチャレンジしてたけど、あっという間に普通のチームになっちゃったね」となるように思う。繰り返すがそれは勝敗の問題ではない。どうやって試合に臨むか。どのようにクラブが競争を生き残っていくか。あるいは、クラブが何に主眼を置いて価値を提供しようと考えるのか。

 

 さて、強化部の決断やいかに。

 

 

*この記事は加筆・修正する可能性があります。

*この記事を書くにあたり、主にTwitter上に流れてくる、多くの方の意見や視点を参考にさせていただきました。お礼申し上げます。