ヴォルレポ

徳島ヴォルティスの試合を戦術的に分析するブログ

2019明治安田生命J2リーグ第1節 鹿児島ユナイテッドFCvs徳島ヴォルティス ~良い知らせと悪い知らせ~

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鹿児島サブ・GK大西、DF平出、赤尾、MF八反田、吉井、牛ノ濱、FW薗田
徳島サブ・GK梶川、DF石井、MF野村、小西、藤原、FW岸本、押谷

鹿児島vs徳島の試合結果・データ(明治安田生命J2リーグ:2019年2月24日):Jリーグ.jp

 

 いよいよ2019年シーズンも幕開けのJ2リーグ。徳島のオープニングゲームはアウェイに乗り込み、昇格組の鹿児島との対戦。鹿児島といえば、同時昇格を果たした琉球から金鐘成監督を引き抜いたことで俄然注目を集めたチーム。その金監督、琉球時代はボールを繋ぐポゼッションサッカーを展開していたようだが、果たして鹿児島ではどうだろうか。

 

 徳島は永井、田向、バイス、清武といった移籍加入組に加え、大卒ルーキーの鈴木徳もスタメンデビュー。内田航や狩野といったあたりも、昨年はスタメンで出場する機会の少なかった選手。ウタカ・バラルらが抜け、シシーニョも怪我で離脱中とはいえ、昨年のチームとはまた随分と顔ぶれが変わった印象を受ける。J2での実績豊富な即戦力を多く加え、リカルド・ロドリゲスにとっても真価の問われる三年目。

 

 

前半 

・合わせ鏡の両チーム

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 鈴木徳真がトップ下のように振る舞う時間も長かったため、「徳島のフォーメーションをどう表記するか?」は意見の別れるところかもしれないが、中盤センターの並び以外は両チームよく似た噛み合わせとなる。つまり、1トップに攻撃的なサイドプレーヤーが2名。最終ラインは両SB+2CB。鹿児島・徳島とも4バックでセットするため、5バックほど迎撃守備が容易ではないことを考えると、アンカー脇のスペースが空きそう…と弱点まで共有していそうな両チームの並びだ。

 

・徳島の変化と物足りなさ

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 キックオフと同時にボールを握った徳島が、まず変化を見せる。特徴的だったのは左サイドのポジションチェンジで、左WGの表原がハーフスペースへ移動。内田裕が列を上げて田中のピン留め役となる。右のハーフスペースには鈴木徳がポジショニング、岩尾と狩野で鹿児島の両IHをけん制。1トップの韓に対しては、バイスと内田航が幅と深さを確保してパス交換を行いながら、時おり永井も参加することによって鹿児島のプレッシングを凌いでいく。

 特にバイスは前半だけでも4~5本ほど、両サイド深くへ低くて速いフィードを蹴り分けていた。これは昨シーズン後半戦はあまり見られなかった光景であり、新たな攻撃オプションの誕生を強く印象づけるものだった。

 

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 立ち上がりは3バック化した田向に藤澤がくいついたり、岩尾・狩野のポジショニングによって、対応する中原優・酒本の裏にあたるハーフスペースへの楔のパスも通っていた徳島だったが、鹿児島も徐々に対応。IHを押し出すことによる4-4-2への変換と、野嶽・藤澤がスペースを埋める意識を強くしたため、危険なエリアへの配球が少なくなっていく。バイスロングフィードや内田航のドリブル、田向のインナーラップなどの工夫は見せていたものの、DFを剥がせるサイドアタッカー不在と前線の迫力不足の影響は甚大。試合は支配するものの決定機は多くないという、見慣れた光景が展開されていた。

 

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 もう一点、試合前から気になっていたことは、井筒の引退・ジエゴの離脱が重なり、サブも含めDFに左利きの選手が殆どいなくなってしまったことだ。この試合では本職はボランチの内田航がバイスの相棒として左CBで起用された。内田航は慣れないポジション、慣れない左足で頑張っていたが、やはり中距離以上のパスになると左足では厳しいようで、内田裕と入れ替わって裏へ抜けた表原というシーンでもセーフティな内田裕へのパスを選択してしまい、タッチラインを割るといったシーンもあった。

 

・鹿児島のしたたかな変化

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 対して鹿児島のポゼッションvs徳島の守備時の構図。徳島は鈴木徳を一列上げて4-4-2に変換。一列目を二枚にしてボールを外へ外へと誘導するのは昨年もよく見られた形だ。特に砂森・藤澤のサイドには杉本・田向が高強度のアプローチで前進を許さない。中盤の底の岩尾・狩野もフィルター役としてネガティブトランジションに備えながら、機を見て前へのアプローチを見せセカンドボールを回収。二次攻撃に繋げていた。

 

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 鹿児島の前進が成功していたときのパターンとしては、SBが徳島のWG引っ張っるとともに、IHが内へ絞りハーフスペースを空ける。ここに藤澤や野嶽が顔を出し、CBやGKからパスを届ける。特に野嶽がハーフスペースで受け、田中がオーバーラップしていく右サイドからの攻撃は、シンプルだが迫力を感じさせるものだった。

 

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 また左サイドで藤澤や砂森がボールを持ったときは、韓がバイスを連れて裏のスペースへ走り、大黒柱のいなくなったゴール前へ中原優や酒本がランニングするパターンも繰り返し見られた。この日の守備を見ていると、今年の徳島対策として「バイスをいかにゴール前から誘拐するか」は重要なポイントになると思われる。これを開幕戦、しかも前半から繰り返し見せていた鹿児島は、したたかな準備を用意してきたと言えるだろう。

 

後半 

・露わになった裏と左

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 後半に入っても、徳島のCB間のパス交換に対してはIHを押し出し、サイドの選手がハーフスペースを埋める守り方を継続する鹿児島。そして、51分には粘り強い守備が歓喜の瞬間を呼び込む。

 バイスが持ち上がり、岩尾→鈴木徳と繋いだところを中原秀と藤澤が挟み込んでパスカット。バイスの裏へ走った韓へシンプルに蹴ると、飛び出してきた永井を交わしてシュート。永井の飛び出しが微妙なタイミングだったことは間違いないが、あまりに不用意な失点。2CBが距離を開けてパス交換を行うとこうしたリスクも発生するわけで、この方法を次節以降も採用するのであれば、中盤の底の一枚がCBに近い位置まで下がるなり、 逆サイドのCBがもう少し絞ったポジションをとるなど、予防的カバーリングの徹底が求められる。

 

 徳島はこの試合、結果的に4失点を喫するわけだが、そのうち2失点はパスミスが起因したもの。残りの2失点は徳島の右サイドを攻められ、左SB(1点目は内田裕、2点目は杉本竜)のところを狙いうちにされたものであった。ジエゴの復帰が当分先であることから、3バックor4バックのいずれを採用するにせよ、左サイドの人選とプレーには次節以降も注目したい。

 

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 65分で0-2。攻めるしかなくなった徳島は、70分までに3枚の交代カードを使い切る。前線は押谷・岸本を2トップ気味に並べ、清武・野村が左右のサイドハーフのように振る舞うようになる。

 

・敗戦のなかの確かな光明

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 この交代による徳島の変化は大きく分けて2つあったように思う。どちらかといえばDFラインとの勝負より、中盤に下がってきてボールを引き出す動きが目立った清武の1トップと異なり、押谷・岸本はよりシンプルに裏を狙う。特に、昨年あまり良い印象の無かった押谷は動きにキレが感じられ、今年にかける意気込みは相当なものがあるのだろう。

 そしてもう1つは、得点力の高い清武がスペースを享受できるようになったことだ。前半の徳島は両サイドのポジショニングによって、鹿児島のDFラインをピン留めすることは出来ていたものの、ペナルティエリアの幅での裏抜けは非常に少なかった。だが押谷・岸本の裏へのランニング、そこにバイスの正確なフィードが加わることによって鹿児島のDF、MFを押し込む。特に右サイド深くへ侵入して、マイナスの折り返しに清武が合わせる形は何度か見られた。

 

 徳島の3点目となったこのゴールなどは、岸本の裏抜けと清武のバイタルエリアでの落ち着きと高い技術が融合したものだったといえるだろう。

 

雑感

 多くの選手が入れ替わっての船出となった新生ヴォルティス。改善ポイントも数多く噴出してしまったものの、新加入の選手たちはそれぞれ輝くプレーを見せた。とりわけ右SB田向の1年目とは思えない馴染みっぷりと、バイスのフィードは印象的だった。2点目を決めた岸本もキレのある動きで存在感を示し、リカルドの下でポジショニングなどの細かい要素を学べば面白い選手になりそうである。

 

 マッチレビューを長らくサボっておりました。石の上にも三年。リカ将と共に三年。今年こそ歓喜が待っていると信じて。暇を見つけ、出来るだけ多くの試合を追いかけたいと思います。宜しければお付き合いくださいませ。