ヴォルレポ

徳島ヴォルティスの試合を戦術的に分析するブログ

徳島ヴォルティス2021シーズン選手別総括 MF編 ~カピタンを越えていけ~

GK&DF編に続いて本日はMF編です。昨日の記事を読み直していて、ここは言及すべきだったなあ(岸本の得点力とか)と感じる点もありますが、この手の記事はスピード勝負でもある。何日も推敲してると自分で嫌になるかもしれないし笑。とはいえ私は、今日も一応真剣です。

GK&DF編はこちらから

ボランチ

7・小西雄大(28試合出場、954分・1得点)

昨年のチームにとって嬉しい発見だった小西の成長だが、今年はその座を鈴木徳真に奪われることとなった。後方からの組み立てを可能な限りセンターバックに任せるポヤトスの方針もあり、小西の左足が生かされるシーンが減ってしまった。それでもサブ組で練習相手を務めながら岩尾にアドバイスを送ったり、地元出身のメリットを生かして家族ぐるみで地域に貢献するなど、果たした役割は小さくない。ガッと相手との距離を詰めてボールを奪いきる守備は得意な反面、逆をとられて簡単に躱されたり、スペースを埋める守備には課題があるように映る。そのあたりが解消されれば、ワンランク上の選手になれるのではないか。左足のキックは他のライバルには無い武器。来年はピッチで更なる貢献を期待。

8・岩尾憲(37試合出場、3145分・3得点)

徳島が誇るカピタンは、今年も不動の存在でありプレーで魅せた。相手の出方を観察しながら試合のテンポをコントロールする点において欠かせない存在であり、長短のパスを織り交ぜたゲームメイク、受け手にピタリと合わせるバックスピンをかけたフィードでも違いを見せた。一方で、セントラルハーフを比較的広く動かすポヤトスの方針下では物足りなさを感じる試合もあり、岩尾といえども万能ではないことが明らかになるシーズンでもあった。もちろん相手のレベルが上がった影響もあるだろう。終盤の[4-3-3]システムでは依然として日本屈指のアンカーであることを自らのプレーで証明し、サポーターが選ぶMIPにも選出。だが本人のリアクションからは戸惑いや葛藤も感じられた。岩尾がピッチの内外で、多大な影響力をもった選手であることは間違いない。だが偉大なリーダーの庇護に守られるだけでなく、いい意味で自立・独立する選手がもっと増えれば、徳島は更に強いチームになれるのではないだろうか。監督交代の影響、結果が出ないチーム、お父様のご逝去など、例年以上に大変な一年だったと思う。今はゆっくり心身を休めてほしい。

13・藤田譲瑠チマ(28試合出場、1473分・1得点)

東京ヴェルディから完全移籍で加入。昨季の徳島戦で強烈なゴールを決めたこともあり、移籍前からお馴染みの存在だった。序盤はセントラルハーフのレギュラーとして一定の存在感を示していたが、ポヤトス合流後は鈴木徳真にその座を奪われベンチを温める試合が多かった。複数のJ1クラブから誘いを受けるなか「ヴェルディとスタイルが似ている」点も決め手となって徳島を選んだのに、試合に出られない悩みを吐露するような記事もあった。ふたたびの転機となったのは[4-3-3]へのシステム変更。インサイドハーフとして無尽蔵の運動量でピッチ上を駆け回り、あらゆるところに顔を出してチームを引っ張った。ファウルで倒された時には相手選手に突っかかっていったり、年上の選手にも遠慮せず大声でチームを引っ張るなど、パーソナリティにおいても貴重な存在。次代のリーダー候補として、チーム内の化学反応を起こすためにも繋ぎ留めたい逸材だが、彼の将来を考えればJ1でプレーするべきなのだろう。今は質より量で貢献するタイプだが、プレーの質、とりわけファイナルサードでの質を上げれば、欧州行きや代表も見えてくる。

23・鈴木徳真(32試合出場、2041分・0得点)

J1の舞台で最も成長し輝いた一人。昨年までは堅実だが特徴の見えづらい選手(失礼)との印象だったが、セントラルハーフの列降りを制限するポヤトスのサッカー下で一変。相手の一列目の後ろで我慢しながらボールを引き出し、攻撃を加速させた。プレスを躱してボールを運ぶ、サイドバック・ウイングの斜め後方でサポートしながら、スペースを空ける・スペースに顔を出す判断も的確。セントラルハーフ・インサイドハーフ・アンカーと、システムが変わっても全てのポジションでスタメン出場し続けたところに、監督からの信頼と彼の戦術理解度の高さが表れている。身体は小さいし、ぱっと見で分かりやすく凄い選手ではないのだが、似たスタイルのチームなら他クラブでもレギュラー争いに絡めそう。クレバーな選手なので、そのあたりのチーム選びも間違えない気がする。というかジョエルも徳真も出て行かれると、マジでボランチいなくなるので残ってください。ポヤトスのサッカーにおけるキーマンの1人なので、残ってもらわないと困る。

 

~アタッカー~

10・渡井理己(27試合出場、1286分・1得点)

小西以上に監督交代の影響をもろに受けたのが渡井だろうか。昨年はピッチ上のフリーマンとして欠かせない存在であり、間違いなくスペシャルな選手だった。リカルドと異なりポヤトスは、選手間の距離を一定に保ち空けたスペースへ入ってくる選手を使う。このため狭いスペースで受けてターン、前にはたいてリターンを受ける、密集を突破していくような渡井のプレーは影を潜めた。技術は卓越しているけどもスピードや推進力に優れているわけではないので、仕掛けても相手に潰されてしまうシーンが多かった。バケンガ・垣田が前線に揃い、ようやく本領が発揮できそうなスペースが生まれた時には負傷離脱。巡り合わせもよくなかった。とはいえ、もう少し「ノーマルなサッカー」でも力を発揮できる下地を作るべきではないか感もある。うまくフィットできなかったとはいえ1得点は寂しい。ポヤトス続投となれば新天地を求めそうな選手の一人であるが、徳島の10番はどのような未来を選ぶだろうか。クラブからの情報発信がやや乏しいチームにおいて、noteで自身のプレーや狙いを解説する試みは非常に面白かったので、来年も継続していただきたい。もちろん徳島で。頼む。

24・西谷和希(22試合出場、1545分・1得点)

オフに本間至恩を獲り逃した徳島にとって、大きかった誤算の一つは西谷の長期離脱ではないかと思う。リーグ戦初出場は10節だったがその後もコンディションが上がり切らないように見える試合が続き、ようやく本領発揮といった感じになったのはラスト10試合ほどだろうか。右サイドはウイングが中へ移動して岸本の滑走路を空けるシーンが多かったが、左は西谷がプレッシングの先鋒隊兼カウンター要員として高い位置をとった。ドリブル突破はJ1でもそれなりに通用していたが、レーンを横断するプレーより縦に抜き切るプレーが優先される現状では、逆足ウイングのデメリットも出ていたように見える。身体は小さいがチーム随一のスタミナの持ち主でありファイター。宮代の去就を考えてもサイドアタッカーは補強があると思われる。来年は左利きウイングとのレギュラー争いになるのではないか。

33・藤原志龍(15試合出場、921分・0得点)

サイドバックの吹ヶと共に、序盤戦最大のサプライズは志龍の台頭だった。大外レーンからドリブルで敵を抜き去り、西谷の不在・至恩の獲得失敗を嘆くサポーターの心の隙間を埋めてみせた。だが守備の強度や連続性、ドリブル突破後のプレー選択、ミドルレンジからのシュートなど課題も多い。一芸に秀でた現状から二芸・三芸と増やしていけるか。西谷というお手本が健在なうちに、追いつけ追いこせで頑張ってほしい。

37・浜下瑛(20試合出場、1042分・0得点)

すまんかった。浜下がこんなにJ1で違和感なくプレーできるとは思ってなかった。すまんかった。派手さはないが、チームのために走り汗をかける選手。岸本の滑走路をタイミングよく空ける。DFラインの隙間をアタックする。労を厭わずプレスをかける。こうしたプレーを地道に繰り返すことができる。基礎的な技術も確かで、決して一人で試合を決めてしまうような力量ではないが、こういう選手がJ1で持ち味を発揮できるのも徳島のサッカーの良さだと思わされた。チームに一人いてくれると非常に助かる存在である。

38・クリスティアン バトッキオ(10試合出場、563分・0得点)

リーグ・アンスタッド・ブレスト29から加入した新戦力。かつてはイタリアの年代別代表で10番を背負った経歴もあり、サポーターの期待は大きかった。右サイドで使われる機会もあったが、基本的には中央でプレーするタイプの選手。プレーの強度や連続性、ボールを奪われない体の強さ、プレーエリアの広範さ、守備での貢献など、さすが!と思わされるプレーも多かった。しかし期待されていたミドルシュートが決まることはなく、わずか563分という出場時間で、7/15に双方合意の上で契約解除となった。徳島では希少な個の力が通用する選手だったが、残った成績だけを見れば補強が成功したとは言い難い。良い選手だったのは間違いないのだが、徳島の選手層的にこのポジション・タイプの選手を、大枚をはたいて獲得する必要があったのか?は意見が分かれるところではないだろうか。

45・杉森考起(24試合出場、1139分・0得点)

名古屋のアカデミーが生んだ至宝。彼のキャリアは知れ渡っているだけに、観る側が過剰に期待を背負わせてしまう部分はあるだろう。昨年は右サイドで水を得た魚のように躍動していたが、今年はレギュラーの座を宮代に奪われることとなった。杉森に限ったことではないのだが、J1に混ぜてしまうと根本的なアスリート能力で見劣りする選手が多いことは否めない。きっちり守備をするし戦術理解度も高く、単なる天才肌の選手ではないのは長所。一方で上手い選手、頭の良い選手からもう一皮むけるために、何か武器が欲しいところ。ドリブル、クロス、ミドルシュート、何でもいいと思う。それが出来れば苦労しないよって話なんだろうけど。でもやっぱりイケメンでサッカーうまくて奥さんめっちゃ美人とかずるいと思う。

 

~FW、監督編に続く~