ヴォルレポ

徳島ヴォルティスの試合を戦術的に分析するブログ

2021J1リーグ第38節 徳島ヴォルティスvsサンフレッチェ広島 【プレビュー】

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予想スタメン

 

 2021年も師走に突入。サッカー界でも監督・選手の去就が取りざたされる時期になった。嵐のような日々だったJ1リーグも最終節。ここでは語り尽くせないほど、本当にいろいろなことがあった。物語は最終章へ。徳島ヴォルティスにとって、クラブの未来を左右する戦いが幕を開ける。

 

 

 16位湘南とは勝ち点で並び(ただし得失点差では湘南が圧倒的に有利)、15位清水とは勝ち点3差。他会場の結果も気になるところだが、徳島はまず眼前の敵を倒す必要がある。サンフレッチェ広島は来季の新監督としてミヒャエル・スキッベの就任が発表されており、残留争いとも上位争いとも無縁の12位。ストレスの無いチーム状態が、弛緩となるか溌剌となるか。

 

 広島は前節の湘南と同様に、5バックで守備を固める。[5-3-2]のセットから、中央に網を張ってカウンターを狙う湘南とは異なり、広島の守備は[5-2-3]。前線から積極的に人を捕まえにいき、高い位置でのボール奪取を狙う。

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前線から人を捕まえてくることが予想される広島の守備

 ここ数試合広島は結果が伴わないこともあり、スタメンの入れ替わりが激しい。明日の攻撃ユニットもどのような組み合わせになるか予想は難しいが、おそらく基本的な守備のやり方は変わらないだろう。

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ギャップを作ってパスコースを空ける

 徳島としては、取り組んできた[3-2]ビルドアップの真価を見せる時だ。3が大きく開くことで広島の一列目にギャップを作り出し空いたコースへパスを出す。ライン間で構える宮代やジョエルを上手く使いたい。前節の湘南戦では、中央のスペースを埋める相手に対して左→右の循環で相手を動かし、時間を得たカカから攻撃が始まることが多かった。湘南と異なり人を捕まえにくる広島に対しては、列の移動で相手のマークを曖昧にさせることも重要かもしれない。

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 広島は前から追いかけたときの弊害として、中盤の脇が空くシーンが散見される。前節、塩谷が中盤起用でゴールも決めていることを考慮すれば、今節も継続して起用される可能性が大。身体の強靭さ・1on1の強さなどは相変わらずなので、うまく背中や脇でボールを受けたい。

 また前節同様、ピッチを広く深く使うことも重要になるだろう。マンマークでくる相手に対してキーパーを組み込む。サイドバックのポジショニングでウイングバックを引き出し、相手のDFラインをスライドさせる。キーパーから逆サイドバックへのフィードで前進する。

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ウイングバックを引き出せれば逆サイドはチャンス

 

 広島の攻撃については、こちらもセントラルハーフの人選によって構成が変わってくる。青山が入れば、彼がディフェンスラインに落ちて組み立てに参加し、ストッパーを押し出すような形でサイドから前進する。前節のように塩谷・ハイネルの組み合わせなら、前からのプレッシングでより直線的な攻撃が増えるだろう。

 徳島のようにポジショニングで優位性を作り出すようなシーンは少なく、あくまで局地戦で数的優位を作り出し、コンビネーションや個人技で突破する印象が強い。もしくは、高い位置でボールを奪ってのショートカウンター。[4-5-1]のセットから、インサイドハーフを押し出す形の多い徳島は、その後のリカバー(中盤のスライドやウイングのプレスバック)をしっかり整理しておきたい。特に西谷が前残り気味で構える徳島の左サイドは、広島が狙ってきそうなポイントの一つだ。

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広島のサイド攻撃

 

まとめ

 これまでの両チームの戦いぶり、そして背負ったものの重要性を鑑みれば、ボールを保持する徳島vs制限をかけていこうとする広島の構図は間違いないだろう。勝ちが必要な徳島は焦って前がかりになったり、不用意な縦パスをカットされてカウンターを受ける展開は避ける必要がある。極限の緊張状態のなかで、取り組みの積み重ねが問われる。

 ボールを保持しながら相手を動かす。試合のテンポをコントロールする。被カウンターを避ける。ゴールと勝ち点3を奪う。自分たちのやるべきことを整理して臨めば、自ずと結果はついてくる。それだけの時間をかけて、このチームのスタイルは積み上げてきた。明日の一戦は、まさに分水嶺。チームのために自分のために、全てをピッチで出し尽くしてほしい。