ヴォルレポ

徳島ヴォルティスの試合を戦術的に分析するブログ

浦和戦を前に、あらためてリカルド・ロドリゲスとダニエル・ポヤトスの違いについて考えてみる

※あらかじめお断りしておきますが、この記事には直近の試合を分析してどうこうみたいな要素は皆無です。

※ここにきて、両監督の人となり、さらに言えばサッカー観を推察するに繋がるのではないか?と思える記事がメディア側から出てきたので、それに乗じて自分の妄想を垂れ流してみようと思います。

 

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 先日、ガンバ大阪からFW一美和成を完全移籍で獲得した徳島ヴォルティス。早くから噂されていたバケンガより先に一美が発表されたこと、ガンバ戦から僅か三日後の公式発表であったこと、その徳島-ガンバ戦にガンバの選手として一美がスタメン出場していたことなど、幾重もの驚きをもって迎えられた移籍劇。だが個人的には、その後にリリースされた彼のインタビュー内容に、より惹かれるものを感じた。

 

news.yahoo.co.jp

 

 このなかで、彼の発言としてこう記されている。

ダニエル監督の方からいろいろな話をしてもらいました。いま、自分が改善すべき課題を的確に指摘されて納得するところがありましたし、徳島のサッカーを肌で感じました。

   ダニエル・ポヤトスは移籍する前の選手に対して「君のこういうところが良い」「ウチではこういう起用をしたい」と語る以上に(もちろんその手の話もしたのだろうけど)、足りない点を明確に指摘したわけだ。普段、自らの手元でずっと見ているわけでもない選手に。

 

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 振り返ってみると、リカルド・ロドリゲスは選手の特長を上手く組み合わせて、チーム力へと昇華させるのが非常に巧みな監督だったと思う。コンバートが成功して輝いた選手も多いし、ベテラン選手がリカルドの要求に応えて年々上手くなっていった例もある。

 彼の中ではプレーの優先順位が決められていた。それは「ボールを運び、相手を引きつけてパスを出せること」。特に三列目~最終ライン・キーパーにかけては、その傾向が顕著だった。センターバックとしては身長が低くても、1on1に脆さを見せることがあっても、攻撃の局面で適切なポジションをとり、果敢にボールを運び、効果的なパスを出せさえすれば、試合に出るチャンスがあった。

 そのような選手起用がボール保持率を高め、数多くのチャンスを作り出す一方で、見逃せない負の側面もあった。フィジカルに特長をもつ選手が少なく、ロングボールやセットプレー、クロスへの対応に度々脆さを見せたのは、その象徴だった。

www.vortis.jp

 

 「自らの志向するサッカーが明確で、選手に対して重要視する能力も特殊」だったリカルド。それが選手間の認識として共有されていたことは、田向のインタビューからも読み取れる。

また、リカルド(ロドリゲス監督)のサッカーは合う選手・合わない選手がいると聞いていたので、いろんな覚悟を持って来ていました。最初は全然上手くいかなかったですけど、むしろ楽しかったですね! いままでと全然違う考え方の監督でしたし、選手ばかりだったので。

  

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 対してダニエル・ポヤトスは、リカルドほど極端な選手起用はしない。もちろんスペイン人らしく、ボール保持は重視するし、ボールを運ぶ能力も軽視しているわけではないだろう。ただしそれらは、彼が各ポジションにおいて求める前提をクリアした上での話。だからセンターバックは福岡将太ではなくドゥシャンだし、サポーターの間で「このサッカーで岩尾は生きるのか?」みたいな話題が俎上にのるのも、原因は同じなのだと思う。監督交代によって輝く選手もいれば、その逆もある。

 各ポジションごとに求める能力が明確。この点では前任者と同じなのだが、ダニエル・ポヤトスは、求める能力がよりノーマルで、基準も厳格なように映る。だから試合に出るためには、ボール保持の局面で力を発揮するだけではダメなのだ。彼の求める基準を満たすために、序列を覆すために、弱点ともしっかり向き合い課題を克服する必要がある。だからこそ、移籍前の一美にも明確な指摘ができたのだろうと思う。

 

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 今日はいよいよ、徳島ヴォルティスがホーム鳴門に、リカルド・ロドリゲス率いる浦和を迎え撃つ日だ。リカルドが礎を築き、ダニエルが新たな色を付け加えようとしている徳島ヴォルティス。ダニエルの本格合流以降、なかなか勝ち点を上積みできずにいたが、22節の清水戦を機に内容が良化しつつある。キーワードは「ハイブリッド」と「スペイン五輪代表の躍進」。円滑さや柔軟性に乏しかったボール保持の局面で、リカルド時代に行っていたレーンと列の移動やローテーションを再導入することで、チームとして効果的な崩しの形を取り戻しつつある。そして東京五輪では、スペイン代表チームが自分たちの理想形を体現してくれた。お手本を目にすることで、具体的な立ち位置や動き方をイメージできたのは選手たちにとって大きな転換点となっただろう。

 徳島には出来なかった大型補強でリカルドを全面的にバックアップし、内容と結果の両立への道を急いでいるように見える浦和レッズ。ユンカー不在でも、小泉佳穂がいなくても、J屈指のタレント軍団であることにかわりはない。相手監督の頭の中は分かっている徳島の選手たちと、特徴を知り尽くした教え子たちと対峙するリカルド・ロドリゲス。特別な感情は試合終了までとっておき、両チームの知力を尽くした90分を堪能したいと思う。