ヴォルレポ

徳島ヴォルティスの試合を戦術的に分析するブログ

2020明治安田生命J2リーグ第38節 徳島ヴォルティスvsギラヴァンツ北九州 ~新たな一面~

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徳島サブ・GK長谷川、DF内田、MF清武、浜下、藤田、梶川、FW河田

北九州サブ・GK高橋、DF福森、河野、MF加藤、永野、FWディサロ、佐藤

【公式】徳島vs北九州の試合結果・データ(明治安田生命J2リーグ:2020年12月2日):Jリーグ.jp

  

 前節、アウェイで金沢との壮絶な撃ち合いを制した徳島ヴォルティス。金沢から移動して中2日で迎えたこの試合は、中盤の小西が出場停止。中盤の底には鈴木が入り、佐藤と垣田の2トップ。右SBは藤田→岸本、CBは内田→石井と、こちらはいつものターンオーバーとなった。

 

 J2前半戦の主役だったと言ってもいいギラヴァンツ北九州。こちらは岡山をホームに迎えた前節から中3日でのアウェイゲームとなる。こちらは加藤→國分、椿→佐藤と中盤のスタメンを2名変更(椿はこの試合後、レンタル元のマリノスメルボルンシティFCへの移籍を発表)。GKの永井、そして小林伸二監督は古巣との対戦となる。

 

 

小林・長島コンビのこだわり

 小林伸二監督、長島裕明コーチという、徳島でもお馴染みのコンビが指揮を執る北九州。例によって堅守速攻スタイルから昇格を目指すのかと思いきや、北九州の地ではボール保持にこだわりを見せ、ポジショナルプレー(っぽい要素)を披露したものだから全J2サポーターが驚いた。この試合でも首位の徳島を相手に、自分たちのスタイルを貫き通そうという姿勢は随所に感じられた。

 

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 北九州のボール保持は[4-4-2]から[3-1-6]への変形から始まる。針谷がCBの脇へ降り、両SBは列をあげる。このとき1トップの鈴木と両SBで徳島の4バックをピン留めできれば徳島の2列目の背後で3枚が浮くような形になるのが特徴的だ。

 新垣、佐藤が徳島のSH-DH間に立つことによって2列目を牽制する。これによって時間を得られるSBにパスを配球する、というパターンも前半によく見られた形である。

 

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 ライン間に3枚浮いている選手がいる(時もある)ので、SBがボールを持っても三角形の形成が容易になる。ボールホルダー以外に一人は裏へ、一人はサポートへといった役割を変換しながら北九州のボール保持攻撃は行われた。

 

リカ将の2トップとその狙い

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 北九州の積極的な姿勢はボール非保持時にも貫かれた。[4-2-4]のような形でプレッシングに挑む北九州。対して徳島はいつものように、相手の出方を観察しながらボール保持を行っていく。この試合ではゴールキックからの再開時に上福元の隣に岩尾が立つ形が目立った。おそらく北九州のプレッシングに対して同数を作られないようにするためだろう。

 

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 北九州は前線の3枚でCBの運ぶドリブルを阻止することはできても、悩ましいのは徳島のSBにボールが届けられた場合になる。おまけに内側のレーンで待つのはドリブルで質的優位を発揮する渡井と西谷。よって、SBが根性でスライドとなるが背後に待つのは垣田・佐藤の長身2トップ。特に垣田がSBの裏へ流れてボールを受け、渡井へリターン、あるいは岸本が垣田の内側へ走りこむ姿が見られた。垣田からすれば自分がサイドへ流れても中には佐藤がいるので、役割に徹しやすかったのではないかと思う。特に村松・永田のサイドはロングボールの際にも標的にされていて、時に2トップへのシンプルなボールを交えながら、両SHの内へ絞るポジショニングとSBのオーバーラップによって北九州の最終ラインをアタックしていく。

 

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 岸本のゴールで1-0とリードして折り返した徳島は、後半開始から佐藤→浜下。前半のツインタワーから、渡井を一列前にあげ浜下は右サイド。いつもの形に戻してきた。 

  後半も自分たちの形を貫く北九州に対して、徳島は引き続き前半の戦い方を継続。北九州のCBに対して高さで優位立ち続ける垣田。垣田が創出した深さに後方からスペースへ走りこんで決定機に絡む渡井。とりわけ前半よりも自由度が増し、スペースを得たときの渡井の働きは別格で、早くボールを前進させたい北九州にとっては大変に厄介な存在だっただろう。

 

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雑感

 ボール保持・非保持とならんで、現代のサッカーで重要視されるのがボールを失った・奪い返した後の振る舞いだ。この試合の徳島は前半、攻守ともに[4-4-2]をベースに戦うことによって、可変システムの北九州に対して優位に立った。奪ったらシンプルに2トップへボールを供給することで、北九州の後方の選手が攻撃参加しにくくなる、という狙いもあっただろう。北九州のプレッシングを回避し、陣形が回復する前に攻め込んだ。

 もしロングボールに対する勝率が五分五分のような状況であれば、いわゆる「ボールは早く送るほど早く戻ってくる」状態になるのかもしれないが、この試合の垣田はほぼ無双状態であり、北九州の陣形を間延びさせるという点においても非常に効果的だった。間延びしたスペースで待ち受けるのは、徳島が誇る小さなアタッカーたち。中2日という制約された環境のなか、相手が嫌がる選択を的確に実行した徳島の完勝といえる試合だった。