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徳島ヴォルティスを分析するブログ

2018明治安田生命J2リーグ第12節 徳島ヴォルティスvs愛媛FC ~幅をとる意識とその対策~

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徳島サブ・GK梶川、DFブエノ、MF小西、狩野、FW山﨑、薗田、藤原志

愛媛サブ・GKパクソンス、DF玉林、MF近藤、神田、FW西田、上原、吉田

 

 徳島ヴォルティスは前節・横浜FC戦から四選手を変更。大﨑は累積警告で出場停止、ブエノがサブに回った代わりに、3バックの真ん中には石井、左には井筒が入る。DAZN中継で紹介された情報によると、公式リリースがあった選手も含めて7選手が何らかのケガで離脱中と、連戦のなか苦しい遣り繰りが続く。システムは前川のポジショニング次第で3-1-4-1-1にも3-1-4-2にも見えた。

 

 ここまで最下位の愛媛FC。だが四月は、岡山に勝利したのを皮切りに1勝1敗3分で乗りきっている。直近三試合は三連続ドローであるが、甲府・松本といった底力のあるチーム相手にも勝点をもぎ取っており、苦しいチーム状況の中でも光は見えつつあるといった感じか。指揮を執るのは、昨年から引き続きオシムの通訳として有名だった間瀬秀一氏。システムはJ2で多くのチームが採用する3-4-2-1でスタートする。

 

 

過密日程との戦い

 前節から中四日で迎えた四国ダービー。さらに中二日で徳島は水戸、愛媛は福岡に乗り込んでアウェイゲームを戦うという日程。このため選手のコンディションをまず考慮する必要があり、センターサークルの頂上付近を目安に、一列目をセットした状態で相手のポゼッションに対峙する両チーム。

 

 立ち上がり、まずゲームの主導権を握った徳島のビルドアップvs愛媛のセット守備における関係性から見ていこう。愛媛のプレッシングは、徳島の両ストッパーにボールが入ったタイミングで開始される場面が多かった。スイッチ役となるのはもちろん、対面の丹羽・河原の両シャドゥで、これにより運ぶドリブルで前進されることを阻害していた。

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 ところがここで両シャドゥが対面の選手に集中してしまうと、今度は徳島の3CHが位置するエリアで数的優劣が発生する。愛媛は逆サイドのシャドゥが絞ってきたり、有田がプレスバックして岩尾をケアする、といった回数もそれほど多くなかったため、岩尾は有田と両シャドゥの間に顔を出すことでボールを引き出していた。

  

 また10分過ぎに徳島が発見した愛媛のもう一つの弱点は左右への揺さぶり。3バック間で一度簡単に左右に振っただけで、愛媛の二列目はスライドしきれずにハーフスペースでパスを受けた大屋が簡単に前を向くことが出来る。

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 なおこのシーンには前ぶれがあり、前半の早い段階で井筒からのロングフィードに杉本竜が抜け出すプレーがあった。試合後の小暮のコメントにも「杉本選手のスピードに警戒して準備をしていました」とあったように、愛媛はここ数試合キレのあるドリブルを見せていた杉本竜のことをかなり警戒していたはず。外に気をとられると中が疎かになりがち、という見本のようなプレーでもあった。

 

 この3バック(5バック)のチーム同士におけるWBのマッチアップを生かした攻略型は右サイドにおいても見られ、19分の前川の先制ゴールもこのパターンから生まれている。

 

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クロスを上げる杉本竜とエリア内に走り込む前川と大本

 

 

幅に対する意識(攻撃編)

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 対する徳島の守備は、前川を一列上げた5-3-2でセット。3バック間でのパス回しは無理に追いかけず、佐藤・前川は背後に位置する神谷・田中を意識したポジションをとり、2トップの脇から前進しようとする動きに対してはCHが出ていく。

 徳島が一列目を二枚でセットしている以上、愛媛は攻撃にかける人数を考えると、出来ればここを3CBで突破していきたいところだ。愛媛側もそれは認識していたはずで、特に山崎は何度かドリブルで運ぼうとする素振りを見せていたが、シシーニョが猛然とアプローチし、それを許さなかった。

 

 また愛媛の攻撃は基本的に、同サイドを深く・縦に早くといった傾向が強い。サイドチェンジを交えながら幅を取って攻撃する形は、特に前半あまり見られなかった。このため徳島の一列目を突破するのに4人5人と擁してしまうと、サイドに追い込まれたあと攻撃が手詰まりになるので、WBやFWがスピードや高さで質的な優位性を生み出す必要が出てくる。

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ボールサイドにスライドして数的優位を作り出す徳島のディフェンス


 例として下図に示したシーンは、パスを受けた有田がマークする石井に競り勝ちボールをキープした時の様子。この場合、ボールより後ろに位置するフリーの選手にパスを預け、サイドを変えて攻撃するのも一つの方法だと思うが、有田はそんなことなど眼中にないかのように同サイドの味方しか見ていない。

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 こうなると必然的に得点が期待出来そうなパターンは限られてくる。それがやはりセットプレーなのだが、神谷は一蹴りで流れを変えられそうな素晴らしいキッカーだった。

 

幅に対する意識(守備編) 

 そしてこの「幅をとる意識の有無」は、守備においても大きな違いを生み出していた。愛媛は一列目を突破されると5-4-1の撤退守備へ移行するが、徳島の両ストッパーがオーバーラップすると、対面のシャドゥが自陣深くへと押し込まれてしまう。このとき1トップの有田のポジショニング、特に大﨑を欠く徳島に対しては岩尾へのケアが有効な対策になり得たはずだった。だが有田の位置どりが徹底されていないため、簡単にサイドを変えられてしまう。

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愛媛の撤退守備とサイドチェンジを行う岩尾

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岩尾がフリーなので最短距離で再びサイドを変えることができる

 このような愛媛の守備の「甘さ」もあり、徳島は杉本竜、大本の両WBがたびたび前を向いた状態で1on1を仕掛けることが出来ていた。逆に愛媛の攻撃・徳島の守備における一例をあげると

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逆サイドに2人余っているが、佐藤がプレスバックしてボールホルダーを潰す

 ロングボールの競り合い、サイドでの1on1などの勝敗は、徳島と愛媛における選手の質の差も考慮する必要がある。だがその差を埋めるための有効な対策は、残念ながらこの日の愛媛からはあまり感じ取ることが出来なかった。

 

久々の快勝  

 リードする徳島は、56分に大屋→山﨑、65分に佐藤→狩野と前線の選手を立て続けに交代。山﨑・狩野の2トップに、前川が二列目の右、シシーニョが左に入る。おそらく山﨑も狩野も、本来の実力からすればもう少し長い時間使いたい選手ではあるが、現在のコンディションではこれぐらいのプレー時間が限界ということなのだろう。

 73分、その狩野が自ら獲得したPKを沈めリードが2点に広がる。

 

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 その後徳島は、5-3-2で撤退守備から奪ったボールは狩野・シシーニョがキープ。サイドへ展開して時間を使いながら、ゲームをクローズ。4月を未勝利で終えたチームにとっては3月21日の甲府戦以来、実に一ヶ月半ぶりの勝利となった。

 

雑感

 愛媛がいろいろと「うーん・・」なチームであったことは確かだが、徳島にとっては久々の勝利。大屋・石井といったベテランも、出番が無くとも気持ちを切らさずに準備してきたことが伺える好プレーでチームに貢献してくれた。

 

 ただ、この試合の出来が特別どうこうではなく、決めるべきところで決めて自分達が主導権を握って試合を進めれば、こういう試合運びに持ち込めるということ。プレッシングだけでなく、5-3-2のブロック守備も完成度は高い。その多様性を生かすためにも、前から行く時間帯にしっかりゴールを奪いたい。